GL消化性潰瘍診療ガイドライン2020改訂第3版
治療のポイント
・胃・十二指腸潰瘍の成因はHelicobacter pylori(H. pylori)感染症と低用量アスピリンを含めたNSAIDsの2大リスク因子が大部分を占める.
・H. pylori感染陽性の潰瘍においては除菌治療が必要である.
・NSAIDs潰瘍においては,NSAIDsの中止,酸分泌抑制薬やプロスタグランジン(PG)製剤の投与が第1選択である.
・重大な合併症として出血と穿孔がある.
Ⅰ.胃潰瘍,十二指腸潰瘍
◆病態と診断
A病態
・消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)は,粘膜筋板を越える深い組織欠損と定義される.酸・ペプシンなどの攻撃因子と胃粘膜防御因子のバランスの破綻により生じる粘膜障害が基本的な機序である.
・H. pylori感染とNSAIDs内服が2大成因とされている.そのほか,NSAIDs以外の薬物やアルコール・腐食性化学物質の摂取,重篤な身体や心理的ストレス,Zollinger-Ellison症候群などによる胃酸の過分泌,好酸球性胃腸症,クローン病,感染症によるものなどが存在する.これらの因子が明らかではない非H. pylori・非NSAIDs潰瘍は特発性潰瘍(IPU:idiopathic peptic ulcer)とよばれ,近年増加傾向にある.
・以前は圧倒的に多かったH. pylori感染による消化性潰瘍が,2000年に除菌治療が保険適用されて以降急速に普及したことにより発生件数が激減した一方で,高齢社会の進行によるNSAIDs内服の増加とも相まって全体におけるNSAIDs潰瘍の比率が高まっている.
・消化性潰瘍治療の症状として最も多いものは上腹部痛(心窩部痛)であり,胃潰瘍では食後に,十二指腸潰瘍では空腹時に強い傾向がある.反跳痛などの腹膜刺激症状が認められる場合は穿孔をうたがう.
・その他の症状としては,胃膨
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