頻度 よくみる(成人女性)
◆病態と診断
A病態
・鉄欠乏性貧血は,本邦において最も頻度の高い貧血であり,年齢層で異なるが男性の約1~2%,女性の約10~20%にみられる.以下のいずれかの要因によって起こる.
1)食事性の鉄摂取不足,消化管からの鉄吸収障害といった供給量の不足.
2)成長や妊娠に伴う鉄需要量の増大.
3)慢性出血性疾患による鉄喪失量の増加.
・なかでも痔疾,憩室,消化管毛細血管拡張症(胃および小腸)などの消化性潰瘍からの出血は,本人が気付かずに進行することがあるので注意を要する.中高年では,胃・大腸癌の初発症状のこともあるので,便潜血反応や内視鏡検査を施行すべきである.成人女性では,月経過多が消化管出血と並んで本症の2大要因となっているので,婦人科的診察を推奨すべきである.
B診断
・診断のポイントは,鉄欠乏性貧血の確定診断を行うと同時に,その原因の検索である.
1)症候:貧血症状,さじ状爪,舌乳頭萎縮,口角炎,嚥下障害,異味症など.
2)検査所見:Hb12g/dL未満,血清フェリチン値12ng/mL未満,総鉄結合能(TIBC:total iron binding capacity)360μg/dL以上(日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第3版」).
3)原因検索:検便,消化管検査,婦人科的検査,ヘモグロビン尿など.
◆治療方針
治療の原則は,貧血を改善させるのみならず,原因疾患を治療することにある.本症は診断が正しければ,鉄剤によく反応する.鉄剤の投与法としては経口と静脈内があるが,特別の理由がなければ経口投与のみで十分治療可能である.また,患者は長期の慢性貧血状態に慣れていることが多く,高度貧血を呈している場合があるが,急性失血あるいは心肺機能低下など合併症のリスクがある場合を除いて輸血は行わない.
A経口鉄剤
これまで市販されてきた経口鉄剤として,
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