今日の診療
治療指針

血友病(von Willebrand病などの遺伝性凝固異常症を含む)
hemophilia,von Willebrand disease,and other bleeding disorders
長江千愛
(聖マリアンナ医科大学講師・小児科学)

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ニュートピックス

・2020年8月にFⅧを含有しない遺伝子組換えヒトvon Willebrand因子製剤のボニコグアルファが上市され,18歳以上のvon Willebrand病患者における出血傾向の抑制の選択肢が増えた.2022年3月には定期補充療法の適応も認められた.

治療のポイント

・重症血友病では,非出血時に欠乏する凝固因子を長期間にわたり定期的に補充する定期補充療法が標準治療である.特に関節症がなく,2回目の関節出血を発症する前および3歳前に開始される1次定期補充療法が関節症発症の予防に有用である.

・血友病Aでは出血抑制の目的で,FⅧ等価活性で15%相当の止血能を有する皮下注射製剤であるヒト化二重特異性モノクローナル抗体のエミシズマブが,インヒビターの有無にかかわらず使用できる.

◆病態と診断

A病態

・血友病はⅩ連鎖潜性遺伝の出血性疾患であり,幼少期より関節内出血などの深部出血を反復する.凝固第Ⅷ因子(FⅧ)の量的・質的異常である血友病Aと第Ⅸ因子(FⅨ)異常症の血友病Bに分類される.同じ関節に出血を繰り返すと標的関節となり,血友病性関節症を発症する.

・von Willebrand病(VWD)はvon Willebrand因子(VWF)の量的・質的異常をきたす遺伝性出血性疾患で,一部を除き常染色体顕性遺伝であるため,男女ともに発症する.1型や2型では皮膚・粘膜出血が中心であるが,3型では関節内出血なども生じ,関節障害をきたすことがある.

・その他の遺伝性凝固因子欠乏症は,第Ⅶ因子欠乏症が最多で,次いでフィブリノゲン欠乏症と第ⅩⅢ因子欠乏症が多い.深部出血が特徴的であるが,鼻出血や皮膚の出血斑も多い.フィブリノゲン欠乏症や第ⅩⅢ因子欠乏症では新生児の遷延する臍出血や,自然流産を生じる.第ⅩⅢ因子欠乏症では外傷後の再出血が遷延する特徴がある.

・後天性血友病では,後天的

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