今日の診療
治療指針

高浸透圧高血糖状態,乳酸アシドーシス
hyperosmolar hyperglycemic state(HHS)and lactic acidosis
税所芳史
(さいしょ糖尿病クリニック・院長(東京))

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治療のポイント

・HHSの治療の基本は脱水の補正とインスリン投与である.

・乳酸アシドーシスでは原因となる病態の治療と輸液,重症例では血液透析を行う.

・いずれの病態も生命にかかわる重篤な状態であり,すみやかな診断と全身管理を含めた適切な初期治療が重要である.呼吸・循環動態が変化しやすいため,モニターを装着して治療にあたる.

◆病態と診断

A病態

1.HHS

・著明な高血糖(≧600mg/dL)と高度な脱水に基づく高浸透圧血症により,循環不全をきたした状態である.

・インスリンの絶対的欠乏はなく(インスリン非依存状態),著しいアシドーシスは認めない.

・高齢の2型糖尿病患者に多く,脱水や感染症,脳血管障害,ステロイド,利尿薬や高カロリー輸液投与などが誘因となる.

・肺炎,消化管出血,腎不全,脳血管障害,心筋梗塞,肺動脈血栓症,横紋筋融解症を合併することがある.

2.乳酸アシドーシス

・嫌気的条件下での乳酸の産生増加や代謝の低下により血中に乳酸が蓄積し,代謝性アシドーシスをきたした状態である.

・組織の循環不全や敗血症,糖尿病などの基礎疾患または薬剤に関連して発症する.

・ビグアナイド薬は乳酸を用いた糖新生を抑制するため,重篤な副作用として乳酸アシドーシスが起こりうる.高度腎機能障害の患者(eGFR<30mL/分/1.73m2)では,メトホルミンは禁忌である.

・致死率は25~50%とされる.

B診断

1.HHS

高血糖(600~1,500mg/dL),高Na血症(>150mEq/L),血漿浸透圧高値(>320mOsm/L)で診断する.高度なアシドーシスは認めず,ケトーシスはあっても軽度にとどまる.

・血漿浸透圧の測定ができない場合,「2Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)/18+BUN(mg/mL)/2.8」の式で概算する.

2.乳酸アシドーシス

血中乳酸濃度の上昇(>5mM),アニオンギャップ

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