今日の診療
治療指針

抗リン脂質抗体症候群
antiphospholipid syndrome(APS)
桐野洋平
(横浜市立大学大学院講師・血液・リウマチ・感染症内科学)

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ニュートピックス

・COVID-19感染症による血栓症をきたした患者に抗リン脂質抗体が検出された.

◆病態と診断

A病態

・APSは,抗リン脂質抗体を有する患者が動静脈血栓症を発症するか,妊娠合併症(妊娠10週以降の胎児死亡,重篤な子癇前症や胎盤機能不全による早産,2回以上の連続した妊娠10週未満の原因不明流産など)を発症した場合に診断となる.

・抗凝固作用のある抗β2-グリコプロテイン(GP)Iに対する自己抗体が,β2 GPIの抗凝固作用を阻害して発症すると考えられている.

・SLEの一症状として認められることが多いが,原発性のAPSもある.

若年者の血栓症では必ず疑う必要がある.

・血栓症のほかに,網状皮斑などの皮膚症状を認めることもある.

・手術や検査前のスクリーニング検査で,梅毒反応偽陽性APTTの延長によって抗リン脂質抗体の存在が疑われることも多い.

B診断

・本邦では抗カルジオリピン(CL)抗体,抗β2 GPI抗体,ループスアンチコアグラント(LAC)の測定が保険収載されている.最近,抗CL IgG/IgM抗体および抗β2 GPI IgG/IgM抗体の同時測定が保険収載された.

・APSの確定診断には,抗リン脂質抗体が12週間以上空けて2回以上陽性であることが必要である.

・直接作用型経口抗凝固薬(DOAC:direct oral anticoagulant)内服によりLACが偽陽性となるので,注意が必要である.

・劇症型APSとは,複数の臓器に血栓性合併症(通常は微小血管性)が短期間で発症することを特徴とするまれな重症型である.

◆治療方針

 APSの血栓症に対して,ステロイドや免疫抑制薬を使用することは推奨されない.また血栓症再発の高リスクプロファイルのAPS患者(SLE合併,動脈血栓症,APS抗CL抗体・抗β2 GPI抗体・LACのトリプル陽性など)に対してはワルファリ

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