今日の診療
治療指針

副腎腫瘍
adrenal tumor
雑賀隆史
(愛媛大学大学院教授・泌尿器科学)

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◆病態と診断

A病態

・副腎はその解剖学的位置特性から腫瘍占拠による症状を呈しにくく,高血圧,不整脈や糖尿病などの内分泌症状の精査中や,検診や他疾患の画像診断で偶然見つかることが多い.内分泌活性の有無で機能性腫瘍と非機能性腫瘍に大別される.

・機能性腫瘍には髄質腫瘍として褐色細胞腫(),皮質腫瘍として原発性アルドステロン症(),クッシング症候群()などがある.別項を参照されたい.

・非機能性腫瘍では偶発腫瘍として発見され,無症候性良性腫瘍のほかに副腎原発悪性腫瘍の可能性やほかの悪性腫瘍の副腎転移などが考慮される.

B診断

機能性腫瘍では内分泌学的検査により診断を確定する.

非機能性腫瘍では腫瘍径4cm以上,腫瘍辺縁不整,経過観察中の著明な腫瘍増大などのいずれかが認められた場合には悪性を疑う.他の悪性腫瘍が合併している場合にはCT・MRIなどの画像所見や臨床経過から転移性腫瘍を診断する.

◆治療方針

A機能性腫瘍

 内分泌活性をもつ腫瘍は原則として全身状態が許す限り手術摘除が適応となる.一般に腹腔鏡手術が選択されるが,大きく内分泌活性の強い褐色細胞腫では開腹手術も考慮される.

B非機能性腫瘍

 副腎原発悪性腫瘍が疑われる症例では摘除の適応.腫瘍が大きい場合や周囲への浸潤が認められる場合は開放手術も考慮する.転移性腫瘍では原発腫瘍の治療方針に基づいて対応する.

C周術期マネージメント

1.褐色細胞腫

 血圧安定と循環血液量維持のためにα遮断薬を2週間以上術前投与する.術後はカテコールアミンの急激な低下に伴う循環動態の変化を集中モニタリングして輸液,昇圧剤などの対応を行う.

2.原発性アルドステロン症

 術前は抗アルドステロン薬による血圧,電解質コントロールを行う.術後は循環動態・電解質管理が重要である.

3.クッシング症候群

 術後は対側副腎機能の抑制状態のために副腎皮質ホルモン欠乏症になる

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