今日の診療
治療指針

蜂窩織炎・丹毒
cellulitis and erysipelas
加藤裕史
(名古屋市立大学准教授・加齢・環境皮膚科)

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治療のポイント

・壊死性筋膜炎やガス壊疽など緊急手術が必要な皮膚軟部感染症との鑑別が重要である.

・軽症では内服抗菌薬での治療が可能であるが,既往や重症度などに応じて注射剤の使用を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・蜂窩織炎は主に皮膚深層,丹毒は主に浅層に炎症の主体をもち,前者は黄色ブドウ球菌,後者はβ溶血性レンサ球菌によって引き起こされることが多い.

・誘因として外傷や静脈機能不全による下肢の浮腫,趾間型足白癬などが代表的である.

・眼窩蜂窩織炎に合併する海綿静脈洞血栓症など,一部の重篤な経過をきたしやすいものには注意が必要である.

B診断

・皮膚に生じた疼痛や熱感を伴った紅斑を特徴とする.

・臨床検査所見は非特異的であり,白血球増加,赤血球沈降速度上昇,CRP上昇などを認める.

◆治療方針

 壊死性筋膜炎やガス壊疽など,緊急手術を必要とする病態や二次的な敗血症を鑑別し,皮下膿瘍が合併していれば可能な限りドレナージを行った後に抗菌薬の投与を行う.抗菌薬の投与期間は,反応に応じて5~14日が妥当とされる.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:methicillin-resistant Staphylococcus aureus)感染の既往がある場合,通常の抗菌薬で効果不十分な場合,人工関節付近の感染,感染性心内膜炎のリスクを有するなどの場合は抗MRSA薬の投与を考慮する.

1.軽症例

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)セファレキシン(ケフレックス)カプセル(250mg) 1回2カプセル 1日4回

2)セファクロル(ケフラール)カプセル(250mg) 1回2カプセル 1日3回

2.重症例

 セファゾリンナトリウム注 1回2g 1日3回 点滴静注保外用量

3.起炎菌がβ溶血性レンサ球菌と判明した場合

Px処方例 症状に応じて下記のいずれかを用いる.

1)アンピシリン(ビクシリン)注 1回

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