今日の診療
治療指針

Ⅱ.下気道感染症の外来治療
藤本卓司
(耳原総合病院・救急総合診療科部長)


A.急性気管支炎


 急性気管支炎の原因で最も多いのはウイルス性であり,ふつう抗菌薬を必要としない.感冒と同様,喀痰が膿性に変化しても必ずしも細菌感染症を意味しない.喀痰が膿性に変化したらグラム染色を行う.ウイルス感染症に続発する細菌感染症は,S.pneumoniaeStaphylococcus aureusH.influenzaeによることが多い.健常者のS.aureus肺炎はウイルス感染後でなければまれである.S.aureus肺炎は入院適応である.

 一過性の血痰はウイルス性の急性気管支炎でよくみられる.しばらく様子をみて構わない.

1.治療

 多くの場合,抗菌薬は不要である.もし用いるなら以下のように処方する.

 (1)S.pneumoniaeH.influenzaeM.catarrhalisを疑うとき

 オーグメンチン 1回375mg,1日3~4回に加えて,

 サワシリン 1回250mg,1日3~4回

 (2)マイコプラズマを疑うとき

 クラリシッド 1回200mg,1日2回,または

 ジスロマック 1回500mg,1日1回(3日間),または

 ジスロマックSR 1回2g(単回)


B.市中肺炎


 市中肺炎は患者背景によって起因微生物が大きく異なる(表5).

 マイコプラズマ,レジオネラで,市中肺炎全体の10~25%を占める.C.burnetiiによるQ熱も決してまれでない.ウイルス肺炎も意外に多く2~15%を占めるが,ほとんどが軽症である.肺炎クラミドフィラはまれである.ニューモシスチス肺炎などHIV関連の呼吸器感染症も念頭におく.亜急性の経過(週~月単位)をとる場合は,必ず結核を考慮に入れる.

 起因微生物を推定するために,患者の年齢,基礎疾患の有無,免疫能,過去の抗菌薬投与,入院歴,先行するウイルス感染の有無,周囲の同症状者,ペット飼育,旅行歴,などの問診が重要である(表5

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?