今日の診療
治療指針

Ⅴ.皮膚・軟部組織感染症の外来治療
藤本卓司
(耳原総合病院・救急総合診療科部長)


A.蜂窩織炎と丹毒


1.蜂窩織炎

 皮下組織にまで及ぶ“比較的深い”皮膚・軟部組織の感染症である.丹毒に比べると,境界は不明瞭であり,周囲と区別できる非連続的な隆起はみられない.侵入門戸となる肉眼的な皮膚病変が観察できることが多く,丹毒と比べて進展が緩徐で,日単位で病変が進行し,完成する.侵入門戸と蜂窩織炎の存在する部位が連続的であるとは限らない.原因菌はS.aureusが最も多い.ただし,S.pyogenes(A群β溶連菌),G群,C群,B群溶連菌の場合や両者同時感染の場合もある.免疫能が低下した患者では腸内細菌や緑膿菌,クリプトコッカスや抗酸菌も起炎菌になりうる.

 市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA:community-acquired MRSA)は病院獲得型MRSA(HA-MRSA:hospital-acquired MRSA)でみられるような危険因子(近い過去の入院,抗菌薬投与,医療器具使用など)のない外来患者から菌交代を経ずにいきなりMRSAが分離される.①小児,若年の健常者に多く,②主に皮膚・軟部組織の感染症であり,③毒性の強いPVL(Panton-Valentine leukocidin;白血球溶解毒素)を産生する株が多い.幸いなことに,HA-MRSAとは異なり,β ラクタム系(ペニシリン系,セファロスポリン系,カルバペネム系)以外の薬剤,すなわち,マクロライド系のエリスロマイシン,クラリスロマイシン,アジスロマイシンやリンコマイシン系のダラシン,アミノグリコシド系,テトラサイクリン系のミノマイシンやビブラマイシン,ST合剤,キノロン系などの感受性が保たれている場合が多い.

2.丹毒

 真皮を病変の主座とし,皮下組織には及ばない“浅層の”感染症である.リンパ管炎を伴う.ほとんどがA群,G群,C群溶連菌による.熱感,赤色の光沢があり,浮

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