今日の診療
治療指針

Ⅳ.肝・腎障害時における各種治療薬の投与法
安藤 仁
(金沢大学教授・細胞分子機能学)
藤村昭夫
(自治医科大学名誉教授・薬理学講座臨床薬理学部門)


‍ 表4をあわせて参照のこと.


A.抗菌薬・抗真菌薬


 肝障害時の抗菌薬は,腎排泄型であるアミノグリコシド系,ペニシリン系,セフェム系を選択したほうがよい(ただし,セフォタキシム,セフォペラゾンなど一部の胆汁排泄型薬物を除く).バンコマイシンは腎排泄型であるが,肝障害を悪化させることがあるため減量する.アルベカシンやイトラコナゾールなど肝障害を悪化させることのある薬物の一部は,重篤な肝障害時には禁忌である.

 抗菌薬は腎排泄型のものが多いが,腎障害時にそれらの薬物を用いなければならないことがある.その際には,血中薬物濃度の上昇により有害反応(カルバペネム系によるけいれん,アミノグリコシド系による難聴など)のリスクが高まらないように,適切に投与量を減量あるいは投与間隔を延長する.


B.鎮痛・抗炎症薬


 非ステロイド性抗炎症薬は,肝障害を悪化させることや腎機能を低下させることがあるため,重篤な肝障害や腎障害を有する患者に対する投与は禁忌である.軽度の腎障害患者に対しては,腎への影響が比較的少ないスリンダクや除去半減期の短い薬物(一部のプロピオン酸など)を用い,投与中は十分な飲水量や尿量を確保して腎機能の推移を観察する.なお,無尿となった慢性維持透析患者では,一般的に投与量を変更する必要はない.

 ペンタゾシンは,肝硬変患者に投与すると代謝の遅延や感受性の亢進により肝性脳症を悪化させやすいため,減量する.また,ブプレノルフィンは重篤な肝障害時には禁忌である.


C.精神疾患治療薬


 抗不安薬,抗うつ薬,抗精神病薬などの精神疾患治療薬の多くは肝で代謝されるため,重篤な肝不全時には投与量を減らす必要がある.また,ベンゾジアゼピン系薬など感受性が亢進するものも知られており,肝障害患者に対しては力価が低く,かつ作用時間の短い薬物を選択するのが望ましい.

 一方,腎障害時には減量を必要と

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