治療のポイント
・呼吸困難は,息が苦しい,息が詰まる,などの呼吸時の不快な自覚症状である.
・救急外来患者の主訴の3.5%を占める.
・換気の需給バランスが崩れた際に生じる.
・ガス交換異常(高炭酸ガス血症>低酸素血症),呼吸筋仕事量,精神状態が関与する.
・突然発症の急性呼吸困難は,重症度や緊急度が高いものが多い.
・生命維持にかかわる生理学的異常があればまず対症的に介入し,そののちに原因となる病態を同定した特異的介入を行う.
◆病態と診断
AABCDEアプローチによる分類・評価
・A(気道)の問題:上気道閉塞(急性喉頭蓋炎,異物,アナフィラキシーによる気道浮腫など).特にAの異常に伴う呼吸困難は,緊急度も重症度も高い.
・B(呼吸)の問題:気胸,肺炎,気管支喘息,COPD急性増悪,間質性肺炎急性増悪など.
・C(循環)の問題:心原性肺水腫,急性冠症候群,肺血栓塞栓症など.
・その他の身体的問題:代謝性アシドーシス,一酸化炭素中毒,神経筋にかかわる急性中毒など.
・精神的問題:過換気症候群,不安神経症.
BPrimary survey
・以下を迅速に評価する.
1)A:開通性を会話や喘鳴より評価する.
2)B:呼吸数,SpO2,チアノーゼ.
3)C:心拍数,血圧,毛細血管再充満時間(CRT),末梢脈触知,冷感,冷汗,網状皮斑.
4)D:GCS(Glasgow Coma Scale),瞳孔.
5)E:体温,外表異常(発赤,皮疹,外傷など).
CSecondary survey
・Primary surveyにおいて異常であった点を中心に,全身診察により鑑別診断を行う.
1)頸部:呼吸補助筋(胸鎖乳突筋や僧帽筋)を用いた努力呼吸(気道,肺病変を示唆),頸静脈怒張(気胸,心原性肺水腫),皮下気腫(気胸).
2)胸部:聴診にて①両側呼吸音減弱(COPD),②片側呼吸音消失(気胸),③副雑音聴取:水泡音(両側性=心原性肺水腫,片