診療支援
治療

アナフィラキシー
anaphylaxis
山口正雄
(帝京大学ちば総合医療センター教授・第三内科(呼吸器))

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GLアナフィラキシーガイドライン2022

ニュートピックス

・アナフィラキシーガイドラインが改訂され,診断基準が3項目から2項目に簡略化された.

治療のポイント

・急性期治療の第1選択はアドレナリン筋注である.

・大量の輸液や,必要に応じて抗ヒスタミン薬やステロイドの点滴静注も行う.

・日頃の備えとして,各部署へのアドレナリン配備,対応手順の掲示,徹底のための訓練をしておくことが望ましい.

◆病態と診断

A病態

アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応である.急速に発現し,死に至ることもある.

・ヒスタミンなどの化学物質が全身に広がって重症のアナフィラキシーに至ると,重い気道・呼吸・循環器症状を呈するが,典型的な皮膚症状や循環器症状を示すとは限らないことに留意する.

B診断

・ガイドラインでは,次の2つの基準のいずれかを満たす場合にアナフィラキシーの可能性が高いとしている.診断に時間をかけ過ぎて治療開始が遅れないようにしたい.なお2)では皮膚症状は必須でない.

 1)皮膚・粘膜の症状が急激に発症するとともに,以下のいずれか1つを伴う.

  a)重度の呼吸器症状:呼吸困難,呼気性喘鳴,気管支れん縮,吸気性喘鳴,ピークフロー低下,低酸素血症など

  b)循環器症状:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下,失神,失禁など)

  c)その他:重度の消化器症状

 2)当該患者にとって既知のアレルゲンまたはその可能性がきわめて高いものに曝露されたのち,血圧低下,気管支れん縮,喉頭症状のいずれかが急速に発症した場合

◆治療方針

 全身のマスト細胞や好塩基球から放出されたヒスタミンに起因する全身の血管拡張・血管透過性亢進を断ち切ることが最重要であり,それがアドレナリンの薬理作用である.投与すべきか逡巡せずに,「迷ったら打つ」「筋注」が原則である.血漿成分が血管外に漏出して血液濃縮・血液量減少を生じるこ

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