診療支援
治療

血液分布異常性ショック
distributive shock
藤田 基
(山口大学大学院准教授・救急・総合診療医学)

頻度 ときどきみる

GL日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG 2020)

◆病態と診断

A病態

・血液分布異常性ショックは,血管の拡張を特徴とし,体血管抵抗の低下(後負荷の減少)による著明な血圧低下と末梢温の上昇を認める.

・敗血症性ショック(,「敗血症―初期治療」の項参照)や神経原性ショック,アナフィラキシーショック(,「アナフィラキシー」の項参照)を含み,また膵炎や心停止後症候群などの全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)や副腎クリーゼ,薬物および毒素などでも生じる.

・原因により血管拡張をきたす機序は異なる.

B診断

・敗血症患者であれば,十分な輸液を行っても平均動脈圧65mmHg以上を維持するために循環作動薬を必要とし,かつ血中の乳酸値>2mmol/L(18mg/dL)を認めた場合に敗血症性ショックと診断する.

・脊髄損傷に伴う四肢麻痺や腹式呼吸などの症状や,腰椎麻酔における局所麻酔薬注入後に低血圧,徐脈を認めた場合は神経原性ショックを強く疑う.

・心拍出量は代償的に増加もしくは正常範囲であり,左室充満圧の低下および体血管抵抗の低下が特徴である.

・血圧低下はあるが,末梢の冷感・浸潤の欠如など血管拡張所見を認める場合や,輸液反応性に乏しく,血管収縮薬への反応が良好な場合に診断する.

◆治療方針

A治療の基本

 ショックへの対応を行いながら,原因検索および主病態の治療も同時に行う.基本的にはバイタルサインをモニタリングできるICUでの管理が必要である.

Bショックへの対応

1.循環血液量減少に対して

 末梢血管の拡張に伴い相対的循環血液量減少状態となっているため,細胞外液補充液を急速投与する.

Px処方例

 酢酸リンゲル液(ソルアセトF)輸液 1回500mL 急速点滴静注

注意 J-SSCG2020では,敗血症性

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