診療支援
治療

肺水腫
pulmonary edema
田上 隆
(日本医科大学准教授・救急医学)

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ニュートピックス

・新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎では,非心原性肺水腫である急性呼吸促迫症候群(ARDS)をきたし呼吸不全に陥ることが知られている.

治療のポイント

・低酸素血症に対して,酸素投与などの対症療法をしながら,呼吸不全の病態が肺水腫によるものなのかを,まずは病歴と身体所見から迅速に評価し,追加の検査を進める.

・心原性肺水腫に対して,循環動態にも注意しながら,硝酸薬の投与や非侵襲的陽圧換気の利用を検討する.

・非心原性肺水腫に対しては,その誘因となった原因に対して,根本治療を行う.肺保護戦略を基本とした人工呼吸器管理を行うが,最重症例ではrespiratory ECMOを必要とすることがある.

◆病態と診断

A病態

・肺水腫は,肺胞腔および間質に過剰に水分(肺血管外水分量)が貯留し,その結果主に拡散障害により呼吸不全をきたす病態である.

・肺水腫は,心原性(うっ血性心不全,輸液過剰など)と非心原性〔急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome),再膨張性肺水腫,神経原性肺水腫など〕に大きく分類される.

・心原性肺水腫とは,肺毛細血管静水圧の上昇に伴い肺血管外水分量が増加する病態である.一方,非心原性肺水腫では,敗血症や外傷などによって炎症性メディエーターなどが出現して血管透過性が亢進することにより,肺毛細血管静水圧が正常でも肺血管外水分量が増加する病態である.

B診断

・呼吸不全の原因が肺水腫によることと診断すると同時に,病態が心原性肺水腫か非心原性肺水腫なのかを意識しながら検査・診断を進める.

・病歴:心原性・非心原性肺水腫それぞれの誘因となりうる既往歴や直近のイベントの有無を聴取する.

・身体所見:患者は呼吸困難感を強く訴えることが多く,起坐呼吸や頻呼吸,頻脈やチアノーゼを伴うことが多い.心原性肺水腫では,頸

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