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治療

カルディオバージョン [■心肺蘇生・循環系の緊急処置]
cardioversion
大下慎一郎
(広島大学大学院准教授・救急集中治療医学)

治療のポイント

・カルディオバージョンは,頻脈性不整脈の治療として行う電気ショックのことであり,心肺蘇生時の致死性不整脈に対する電気的除細動(defibrillation)とは区別される.

・心電図のQRS波に同期させて電気ショックを与えることにより,頻脈性不整脈を改善させる.

・カルディオバージョンによって,むしろ循環動態が増悪する可能性もあるため,呼吸補助資機材(酸素,バッグバルブマスクなど),気管挿管セット,循環作動薬などを,十分に準備しておく.

A病態と適応

1.病態

 カルディオバージョンの適応となる頻脈性不整脈には,心房細動・心房粗動・発作性上室性頻拍などが含まれる.心房性期外収縮などをきっかけにして右心房の副伝導路に刺激が伝わると,右心房内にリエントリー(電気刺激が心房内をぐるぐる回る)が発生し,心房粗動を引き起こす.心房細動では明らかなリエントリー回路がみつからないこともあるが,心房内に小さなリエントリーが複数存在し,異常興奮を起こしている可能性がある.

2.適応

 すべての頻脈性不整脈がカルディオバージョンの適応になるわけではなく,不安定な頻脈にのみ,カルディオバージョンを行う.不安定な頻脈とは,患者の症状が不安定(例:意識レベル低下,失神,胸痛,血圧低下,呼吸困難,末梢冷感・湿潤など),かつ心拍数が持続的に150回/分以上の頻脈である.実施にあたっては経食道エコーで心房内血栓を否定しているか,十分な期間適切な抗凝固療法を行っているかを確認し,洞調律化に伴う心房内血栓拍出による塞栓症の発症に留意する.

B手技

1.事前準備

1)患者に心電図・SpO2 モニターを装着し,末梢静脈路を確保する.

2)十分な人員を確保し,救急カート,吸引器,緊急薬剤などを準備する.

3)患者・家族に十分な説明を行い,インフォームド・コンセントを得る.

2.除細動器の準備

1)除細動器のスイッチを入れ,必要な

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