診療支援
治療

酸・アルカリ化学損傷
chemical injury(acid and alkali)
清水弘毅
(地域医療機能推進機構徳山中央病院・救急科主任部長(山口))

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治療のポイント

・医療スタッフが2次曝露しないように標準予防策を行い,対応することが望ましい.

・どの物質が,どのような状態(固体,気体,液体)で,どこに曝露したか?

・曝露物質を避け,洗い流せるところは水道水で洗い流す.

・受傷人数の把握,受傷した理由を確認する.

◆病態と診断

A病態

・酸,アルカリともに曝露することで化学反応を起こし,組織を傷害する.

・酸に曝露すると水素イオンが組織と結合し,凝固壊死を起こす.そのため,拡がりは限定される.

・アルカリに曝露すると水酸化物イオンが蛋白を融解することで傷害する.そのため,どんどん深い層,つまり上皮から粘膜下層,筋層にと拡がっていく.

・傷害される範囲については物質の性状により異なる.例えば,粉末,固形物は口から入った場合は口に近い部位に留まりやすく,液体は口から食道,胃へと流れ込む.

B診断

・1番は状況証拠問診により矛盾がないようなら確定する.

・その証拠,証言をもとに局所症状を診て,矛盾がないかを確認する.

・誤飲,誤嚥についてはCT,上部消化管内視鏡検査を行うことにより,重症度を含めた全身の状態を把握できる.上部消化管内視鏡検査ではグレード分類がある.

 ・0:正常粘膜

 ・Ⅰ:粘膜の充血または浮腫

 ・Ⅱa:粘膜出血,びらん

 ・Ⅱb:粘膜出血,びらんに加え,周囲の潰瘍形成

 ・Ⅲa:小領域での多発性潰瘍または壊死

 ・Ⅲb:広範囲での多発性潰瘍または壊死

・慢性期に狭窄が生じる確率はグレードが上がるに従い高くなる.これらに対し,有効な治療法は基本的には存在しない.

◆治療方針

 現時点で有効性を示す治療はない.中毒の原則に従い,曝露物質を避け,洗い流せる部位はなるべく洗い流す.また,救急の原則に従い,ABCのコントロールが優先される.

 服用にて生じた場合は議論が分かれる.誤嚥リスクが少なく,しっかり飲み込みができるなら,エビデンスははっ

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