診療支援
治療

縦隔腫瘍
mediastinal tumor
奥村明之進
(国立病院機構大阪刀根山医療センター・院長)

頻度 あまりみない

GL肺癌診療ガイドライン2022年版―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む

治療のポイント

・縦隔内に発生する原発性腫瘍のうち,胸腺,リンパ節,神経,心膜,縦隔胸膜,迷入甲状腺,迷入副甲状腺,脂肪組織から発生する縦隔内の腫瘍や嚢胞性病変を総称して縦隔腫瘍とよぶ.甲状腺腫瘍の縦隔内進展は縦隔腫瘍に含める.また,気管支,食道,心膜から発生する嚢胞は新生物ではないが,慣例的に縦隔腫瘍に含められる.発生臓器,発症年齢,良悪性,病理学的診断の点で多様な腫瘍が包含される.

・原発臓器の種類と悪性度によって,外科治療,薬物療法,放射線治療,およびこれらの組み合わせの治療が選択される.治療方針を決定するために,生検による病理診断が必要になることがある.

・最も頻度の高い疾患は胸腺上皮性腫瘍である.胸腺上皮性腫瘍には正岡病期分類とUICCによるTNM病期分類があり,病期診断によって治療法を決定する.

◆病態と診断

A病態

・主な疾患は胸腺上皮性腫瘍,胸腺胚細胞性腫瘍,神経原性腫瘍,リンパ系腫瘍,脂肪腫,嚢腫である.日本胸部外科学会の集計によると,2018年の1年間に本邦の749施設において手術を施行された縦隔腫瘍5,361例のなかで,胸腺腫が2,098例(39.1%)で最も多く,その次は気管支原性嚢腫などの先天性嚢腫1,224例(22.8%)であった.

・小児の縦隔腫瘍は有症状が多く,悪性腫瘍が多い.成人では人間ドックのCTにより無症状で発見されることや,傍腫瘍症候群の合併で発見されることが多い.

・胸腺腫には,重症筋無力症赤芽球癆低ガンマグロブリン血症(Good症候群)などの自己免疫疾患が合併することが知られている.

・胸腺カルチノイドは多発性内分泌腫瘍症候群(MEN:multiple endocrine neoplasia)Ⅰ型として発症することがある.クッシング症候群を合併することもある.

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