治療のポイント
・活動性出血例ではまず循環動態を安定させ,緊急内視鏡治療を行う.確実な止血処置が必要とされる.
・破裂した場合は大出血により肝不全に陥り重篤な経過をたどることも少なくないため,肝硬変など門脈圧亢進症の患者には定期的な内視鏡検査を行い,出血リスクの有無より予防的治療の適応を判断する.
・内視鏡治療として内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL:endoscopic variceal ligation)と内視鏡的硬化療法(EIS:endoscopic injection sclerotherapy)が代表的である.
・EVLはEISに比して手技的に容易だが再発率は高い.
◆病態と診断
A病態
・食道静脈瘤は,門脈圧亢進症により代償性に形成された門脈系から大循環への遠肝性側副血行路の1つであり,食道周囲の静脈系が拡張することで形成される.
・破裂時は致命的になりうるため,門脈圧亢進症患者での静脈瘤の管理は非常に重要である.
・原疾患としては肝硬変が最も多い.
B診断
・内視鏡所見が診断の基本であり,「門脈圧亢進症取扱い規約(第4版)」(2022年)の食道・胃静脈瘤内視鏡所見記載基準を用いて,静脈瘤の程度を評価する.占有部位(L:location),形態所見(F:form),色調(C:color),発赤所見(RC:red color sign),出血所見(bleeding sign),粘膜所見(mucosal findings)の6項目が記載される.直近出血例で自然止血されている場合では,赤色栓や白色栓が認められる.内視鏡所見から,迅速に的確な方針を決定する.
・その他の画像診断としては,超音波内視鏡や3D-CTが血行動態を把握するうえで有用である.
◆治療方針
活動性出血例は緊急の治療が必要である.連珠様形態で中等度(F2)以上の大きさ,RC sign陽性であったり,赤色栓や白色栓が認められる場合はそ