診療支援
治療

腹痛
abdominal pain
大久保政雄
(山王病院・副院長(東京))

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◆病態と診断

A病態

・腹痛は日常診療でよく遭遇する疾患であり,疾患原因も消化器領域のみならず多岐にわたるために広い視野で診察を進める必要がある.

・急性発症するものから慢性経過をたどるもの,重症度も軽症のものから重症のものがあり,自然軽快するものから緊急手術を要するものがある.

・腹痛の性状は体性痛と内臓痛がある.体性痛は鋭い痛みであり,大脳への体性感覚野へ投射され,局在がはっきりしている.一方,内臓痛は鈍い痛みであり,投射部位はわかっておらず,局在ははっきりしない.

・関連痛(放散痛)は,内臓痛を伝える感覚神経と皮膚の痛覚を伝える感覚神経が共通の脊髄視床路に入ることで,内臓痛を皮膚の痛みと錯覚することを指す.

・痛みの種類,発症様式,発生部位からある程度疾患を想定することができるために,正確な問診と痛みの性状の把握,身体所見を得ることがとても重要である.

B診断

・第1にバイタルサイン確認,第2に問診による情報収集がきわめて重要である.発症様式(onset),寛解・増悪因子(palliative/provocative),痛みの質(quality),痛みの場所や放散痛の有無(region/radiation),痛みの程度や随伴症状(severity/associated symptom),時間経過(time course);「OPQRST」による病歴聴取法に加え,既往歴,服薬歴,家族歴,併存疾患の有無,妊娠の有無,アレルギー歴,食事内容などについての聴取が大切である.

・身体診察では,視診,聴診,打診,触診と進める.視診では腹部膨隆部や腫瘤,手術痕などを観察し,聴診では腸蠕動音,血管雑音を聴取する.打診では腹水の評価や,腸管拡張,腹膜炎の有無がわかる.触診では圧痛,波動などにより腹腔内の状態の把握がある程度可能となる.

・問診や身体所見からおおよその診断がつくことが多いが,確

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