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GL肝癌診療ガイドライン2021年版
ニュートピックス
・本邦ではTACE不応の概念に基づいた薬物療法への切り替えのタイミングが推奨されている.さらにTACE不適の概念にしたがって,効果が限定的で肝予備能を低下させるTACEを避けること,および薬物療法導入の治療コンセプトが議論となっている.
治療のポイント
・主にChild-Pugh分類AまたはBの手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌で,腫瘍個数4個以上もしくは1~3個で腫瘍径が3cm超のもの,および門脈腫瘍栓合併例の一部がTACEの適応となる(「肝癌診療ガイドライン2021年版」).
・限局した腫瘍においては,ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル抗癌剤混合液を腫瘍周囲の門脈枝内まで注入することで局所治療効果が向上する.
・肝予備能や腫瘍進展度に応じて塞栓強度や範囲を調節し,同一血管の再塞栓は3か月以上の治療間隔を空けるように努める.
・大型肝癌に対するTACEでは腫瘍破裂の予防が優先され,次に脈管内への腫瘍進展の阻止が重要となる.また,肝外側副路からの栄養血管を確実に塞栓する必要がある.
・TACE不応と判断される場合は,TACEを中止し薬物療法の導入を考慮する.
◆病態と診断
A病態
・典型的な多血性肝細胞癌は動脈血で栄養されている.そのため腫瘍を栄養する肝動脈内に経カテーテル的に塞栓物質を注入し栄養動脈を塞栓することで,腫瘍を阻血壊死させる.非腫瘍部肝の一部も同時に塞栓されることがあるが,非腫瘍部は門脈血流が存在するため壊死に陥ることは少ない.
・TACEには,抗癌剤を混合したヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルと多孔性ゼラチン粒を使用したconventional TACE(cTACE),薬剤溶出性の球状塞栓物質を用いたdrug-eluting beads TACE(DEB-TACE)や,マイクロバルーンカテ