頻度 ときどきみる
治療のポイント
・ナトリウム(Na)代謝異常は血漿浸透圧の異常により主として神経学的異常を呈するが,治療を急ぐべきかどうかは症状の有無によって判断する.
・補正が速すぎると脳浮腫や浸透圧性脱髄症候群を誘発するリスクが高まるため,補正速度に注意が必要である.
・原因の診断や補正方針には細胞外液量の情報が有用であり,患者の細胞外液量の状態を把握する必要がある.
Ⅰ.高Na血症
◆病態と診断
A病態
・高Na血症は血清Na濃度≧145mEq/Lと定義され,血漿浸透圧の上昇により神経学的所見を中心にさまざまな症状をきたす異常である.
・Naイオン(溶質)の量に対する自由水(溶媒)の量が相対的に少ない状態であり,自由水の喪失(腎性・腎外性)やNaイオンの過剰負荷(Naイオンの過剰投与による医原性,海水溺水など)がありうる.
・ただし,口渇中枢に異常がなく自由に飲水をできる条件では通常,高Na血症は維持されない.
B診断
・高Na血症・高浸透圧環境が形成され維持されている理由を細胞外液量によって分類して検討するが,実際には細胞外液量が減少している場合が多い.
1.細胞外液が増加している場合
・自由に飲水をできない患者などにNa濃度の高い製剤の投与が行われた場合や,海水溺水など.
2.細胞外液が正常~減少している場合
・皮膚や消化管からの(腎外性の)低張液の喪失では尿量減少が認められる一方で,腎性の喪失では尿量が減少していない,もしくは増加することが多い.このなかで,尿浸透圧が比較的高い場合には浸透圧利尿により自由水が失われている場合が考えられ,尿浸透圧が低い場合にはバソプレシンの分泌不全(中枢性尿崩症)や作用不全(腎性尿崩症)を考える.また,腎実質障害(特に髄質間質障害)によって尿が十分に濃縮できない場合も尿量は減少しないことが多い.
◆治療方針
自由水成分の多い輸液製剤(5%ブドウ糖液や低張液輸液