診療支援
治療

発作性夜間ヘモグロビン尿症
paroxysmal nocturnal hemoglobinuria(PNH)
櫻井政寿
(慶應義塾大学講師・血液内科)

頻度 あまりみない

GL発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド令和4年度改訂版(2023)

ニュートピックス

・診断においてPNH型血球の定量が必須であるが,令和2年度の診療報酬改定に伴い,2種類のモノクローナル抗体を用いた赤血球・好中球表面抗原検査(CD55/CD59)が保険収載された.

・ラブリズマブの高濃度製剤が市販され,点滴時間の短縮が可能となった.

治療のポイント

・溶血とそれに伴う臓器障害・症状の程度により,抗補体療法の適応を判断する.

・現在使用できる抗補体療法(抗C5抗体薬)には長時間作用型で8週間隔投与のラブリズマブと2週間隔投与のエクリズマブがある.

・抗C5抗体薬投与中は,髄膜炎菌などの莢膜形成細菌感染症に注意が必要である.

◆病態と診断

A病態

・PNHは,PIGAを含むGPIアンカー合成にかかわる遺伝子に変異を有する造血幹細胞がクローン性に拡大して生じる疾患で,補体介在性血管内溶血とそれに伴う臓器障害を特徴とする.

・PNH型血球では,これらの遺伝子変異によりGPIアンカー型蛋白質(GPI-AP)の合成が阻害され,GPIアンカー型の補体制御因子CD55やCD59の発現が低下あるいは欠損する.その結果,補体の活性化により赤血球が破壊され(血管内溶血),貧血に至る.

・再生不良性貧血を代表とする骨髄不全疾患としばしば合併・相互移行する.

・血栓症は海外例と比較して本邦例ではまれだが,時に致命的となりうる合併症である.

B診断

血清LDH値上昇,網赤血球増加,間接ビリルビン値上昇,血清ハプトグロビン値低下などの溶血性貧血所見やヘモグロビン尿,原因不明の血栓症,骨髄機能不全を認める場合,PNHを疑いフローサイトメトリー検査〔赤血球・好中球表面抗原検査(CD55/CD59)〕を行う.

・PNHタイプ赤血球(Ⅱ型+Ⅲ型)が1%以上,かつ血清LDH値が正常上限の1.5倍以上認められれば,臨

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