診療支援
治療

脳膿瘍
brain abscess
高嶋 博
(鹿児島大学大学院教授・脳神経内科・老年病学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・細菌,真菌,結核,ノカルジアなどの菌種により,治療法が大きく変わる.基礎疾患や免疫抑制状態,手術後などにより起因菌が変化する.培養で起因菌が判明するまで,状況から推測して,広くカバーして治療を進める必要がある.

◆病態と診断

A病態

・副鼻腔炎,歯性膿瘍など隣接する感染巣からの侵入もあるが,通常は血行性に菌が脳に到達する.

・細菌性ではStreptococcus属,Bacteroides属が多く,手術後であればブドウ球菌が多い.

B診断

突然の頭痛てんかん発作,あるいは片麻痺,失語,半盲,小脳失調などの巣症状が時間や1日単位で悪化する場合に考える.発熱は50%以内.

・頭部MRIにおいて診断されるが,病期によって画像が大きく異なる.細菌性の場合には,早期には限局性のT2,FLAIR高信号を認め,のちに被膜が形成され,リング状の造影効果がある浮腫を伴った膿瘍がみられる.膿がたまると拡散強調画像で高信号となり,その皮膜はT2低信号を呈する.

・培養で菌の同定を試みるのがベストであるが,炎症反応が少なく,菌の同定ができない場合も多いので,脳腫瘍や脱髄性疾患との鑑別が難しい場合もある.

◆治療方針

 内科的には,早期の治療開始が望まれるため,広域スペストラムの抗菌薬と,近接域からの波及による場合などは嫌気性菌をカバーするメトロニダゾールを併用して投与するのが一般的である.メトロニダゾールは神経毒性が強く,10日以内の投与が望ましい.血液または膿瘍の好気性,嫌気性培養で分離された病原体の抗菌薬感受性検査結果に基づき,de-escalationを行う.

 膿瘍径2cm以下の場合には内科的治療を優先するが,膿瘍径が大きいもの,内科的治療で悪化するものは,外科的治療の適応となる.膿瘍が小さいか,脳の生命維持にかかわる部分での場合以外は,外科的ドレナージが推奨される.手術療法

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