診療支援
治療

成人の細菌性髄膜炎
bacterial meningitis in adults
石川晴美
(国立病院機構埼玉病院・脳神経・認知症センター部長)

頻度 あまりみない

GL細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014

ニュートピックス

・主要病原体(肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌)に対するワクチンが定期接種化され発生頻度は一時的に低下したが,非ワクチン血清型への置換と抗菌薬感受性が低下した細菌株の出現により,現在では世界中で増加傾向にある.

・なお,近年,侵襲性肺炎球菌感染症の要因となっている莢膜型22F,33Fを含めた15価ワクチンが米国ではすでに承認されている.

治療のポイント

・転帰改善には発症から初期治療開始までの時間が大きく影響するため,細菌性髄膜炎を疑った場合すみやかに経験的治療を開始する.

・サイトカイン・カスケードによって起こる強い炎症,サイトカインストームが疾患の本態であるため,その制御が重要である.

◆病態と診断

A病態

・病原体が「肺や消化器など遠隔感染巣からの血行性」,または「近傍感染巣からの直達性」にくも膜下腔に到達し発症する.

・髄腔内では宿主の免疫防御機構が機能しないために,細菌は急速に増殖する.増殖した細菌の自己融解や宿主・抗菌薬が関与した溶解により多様な微生物関連分子パターンが遊離した結果誘導される,宿主の免疫応答を介したサイトカイン・カスケードによって起こるサイトカインストームが疾患の本態である.興奮性アミノ酸,活性酸素,活性窒素など神経細胞死を誘導するメディエータが産生され,結果として,抗菌薬により髄腔が無菌化されたあとも神経の損傷は進行する.

B診断

・確定診断は脳脊髄液検査での病原体診断にて行うが,結果を得てからの治療では予後不良となることや,不全治療例では病原体が確定できないことも推測され,経過や症状から細菌性髄膜炎を積極的に疑う.

・脳脊髄液検査では初圧上昇,多核球優位の細胞数増多,蛋白増多,髄液糖/血糖比≦0.4を認める.不全治療例では単核球優位となったり,細胞数は一般的には著増しているがシャント感染

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