診療支援
治療

アルツハイマー病
Alzheimer's disease(AD)
和田健二
(川崎医科大学教授・認知症学)

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GL認知症疾患診療ガイドライン2017

ニュートピックス

・2023年1月に,アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリルに対する抗体薬であるレカネマブが,脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症(早期AD)における認知機能進行を抑制する治療薬として,米国食品医薬品局(FDA)に迅速承認された.また,わが国においても国内製造販売が承認された.

・ドネペジルは,これまで口腔内崩壊錠,ゼリーやドライシロップなどの経口薬のみであったが,経皮吸収型製剤としてアリドネパッチが製造承認され,貼付薬という選択肢が増えた.

治療のポイント

・アルツハイマー型認知症に対する薬剤の効能・効果は,認知症症状の進行抑制であり,根本的治療薬ではない.治療については,薬剤治療とともに非薬物治療も同時に導入する.その際には,多職種連携し,患者本人や家族介護者に対して介護保険制度や社会福祉制度の利用などについての情報提供が鍵となる.

◆病態と診断

A病態

・アルツハイマー病(AD)は,大脳皮質において,神経細胞外にアミロイドβ(Aβ)が沈着して形成される老人斑と,神経細胞内にリン酸化タウ蛋白が蓄積する神経原線維変化を病理学的特徴にもつ神経変性疾患である.

・潜行的に発症し,健忘(近時記憶障害)で発症することが多く,見当識障害,視空間機能障害,遂行機能障害,失語などが加わり症状は緩徐に進行する.認知機能低下は存在するものの社会的・手段的なADLに支障がない状態は認知症の前段階である軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)で,手段的日常生活動作に援助を要する段階が認知症の状態である.

・抑うつ気分・不安などの感情の障害,幻覚・妄想,焦燥性興奮・徘徊などの異常行動やアパシーなどのさまざまな行動・心理症状(BPSD:behavioral

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