診療支援
治療

悪性腫瘍の遠隔効果による神経障害
paraneoplastic neurologic syndromes(PNS)
河内 泉
(新潟大学大学院准教授・医学教育センター・脳神経内科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・PNSは,免疫チェックポイント阻害薬(ICIs:immune checkpoint inhibitors)による神経系免疫関連有害事象(nirAE:neurological immune-related adverse event)と発症機序がオーバーラップする.

・2004年にPNSの臨床診断基準が策定され,2021年に改訂された.

治療のポイント

・本症を疑ったらすみやかに集学的治療(免疫療法,腫瘍およびけいれん発作に対する治療,全身管理)を行う体制を構築する.

・腫瘍を併発している場合,すみやかに腫瘍の除去を検討する.

◆病態と診断

A病態

PNSは,①神経系を障害する,②腫瘍と関連する,③神経抗体をはじめとする免疫介在性機序を有する神経疾患と定義される.

・PNSは,腫瘍の直接効果(転移,癌性髄膜炎など)と間接効果(凝固異常,代謝障害,化学療法による有害事象,日和見感染など)を除外する.

・PNSの臨床病型は,①高危険度(旧称,古典的PNS),②中危険度に分類される.①高危険度には,脳脊髄炎,辺縁系脳炎,亜急性小脳変性症,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群,亜急性感覚性ニューロパチー,慢性胃腸偽性腸閉塞症,ランバート・イートン筋無力症候群が該当し,高い確率で腫瘍が存在する.②中危険度には,抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎やStiff-person症候群などが該当する.腫瘍が存在する場合と存在しない場合がある.

・PNSの自己抗体は,①高危険度(70%以上に腫瘍が関連する),②中危険度(30~70%に腫瘍が関連する),③低危険度(30%以下に腫瘍が関連する)に分類される.自己抗体は,細胞膜表面抗原に対する自己抗体(例:NMDA受容体抗体)と,細胞内抗原に対する自己抗体(例:Hu抗体)に大別され,一般に前者では免疫治

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