診療支援
治療

双極症,抑うつ状態
bipolar disorder,depressive state
寺尾 岳
(大分大学教授・精神神経医学)

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GL日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅰ.双極性障害 2020

GL日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症) 2023

治療のポイント

・遷延しやすく,抗うつ薬により賦活症候群や躁転の危険性もあり,さらには自殺の危険性もあるため,慎重な治療が必要である.

・気分安定薬や非定型抗精神病薬を,いずれか単剤もしくは併用して治療を行う.抗うつ薬はできるだけ併用しないようにするが,やむをえず併用する場合には選択的セロトニン再取り込み阻害薬やミルタザピンなどを用いる.

・薬物療法が奏効しない場合には,高照度光療法や電気けいれん療法を試みる価値がある.

◆病態と診断

A病態

・双極症の病態生理は十分には解明されていないが,うつ病よりも遺伝の影響が大きいとされる.光や睡眠・覚醒リズム,対人関係など環境の関与も大きい.さらに,遺伝と環境の相互作用もある.

B診断

・過去に躁エピソード軽躁エピソードがあった患者で抑うつエピソードを生じた場合に,双極症の抑うつエピソードと診断する.この抑うつエピソードの診断基準は,うつ病の抑うつエピソードの診断基準と同じである.しかし実臨床においては,うつ病と比較して,過食や過眠,身体のだるさなど,非定型の病像を呈することが少なくない.

・若い患者のうつ病は,実は双極症の抑うつ状態であることがしばしばあり,これを潜在性の双極性うつ病(latent bipolar depression)とよぶ.抗うつ薬の投与に際して注意が必要である.

◆治療方針

 双極症は再発予防が重要なので,最初から気分安定薬を積極的に使っていき,正常気分に回復した後も継続する.「日本うつ病学会治療ガイドラインⅠ.双極性障害 2020」も参照されたい.

A抑うつ状態の治療

Px処方例 気分安定薬1),2)のいずれかを中心に投与し,奏効しない場合に新規抗精神病薬3)~5)のいずれかの併用を行い,それ

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