診療支援
治療

身体症状症
somatic symptom disorder
富永敏行
(京都府立医科大学准教授・精神医学)

頻度 よくみる(年間5,000人/10万人)

治療のポイント

・身体症状の苦痛を保証し,十分に共感する.

・当面の目標を症状消失ではなく,症状があっても行動できることに設定する.

・どのような特徴に基づいて発症し,持続しているのかを理解する.

◆病態と診断

A病態

・心配傾向,完璧主義,否定的感情が関連する.女性,高齢,被虐待歴,慢性疾患の存在は危険因子である.うつや不安を伴うことも多い.

・職場の不適応,心的葛藤,孤立など,心理社会的要因は症状の持続因子となる.

・心身症との違いは,心身症は身体疾患(胃潰瘍,過敏性腸症候群など)の発症や経過に心理社会的要因が関連した,機能的(器質的)な障害を伴った身体疾患群である点である.

B診断

・DSM-5-TRの診断は,苦痛を伴う身体症状の存在(A基準),どのような解釈でどう行動しているかという認知・感情・行動の症状(B基準)で診断される.

・典型的な認知は,身体症状への悲観的な思考,原因を身体疾患にのみ結びつける解釈である.不安を伴い,疾病検索や救急受診などの行動,鎮痛薬や抗不安薬への依存が生じることもある.

・身体疾患(外傷後の疼痛など)の慢性化で発症し,中枢性感作と関連することがある.

・小児では,腹痛や頭痛が多いが,病気自体を心配することはまれである.

・高齢者では,身体疾患の罹患率が高く,倦怠感など加齢に伴う症状を呈しやすい.訴えが認知機能の低下による場合がある.

・ICD-11では,身体的苦痛症(bodily distress disorder)となったが,診断のポイントは,身体に向かう過剰な注意である.おおむね,DSM-5身体症状症の概念と同じである.

◆治療方針

1)身体症状の苦痛に寄り添い,安定した治療関係を築く.

2)身体疾患の併存,既往歴,社会背景を把握し,病態の特徴を理解する.

3)必要時は薬物療法,簡易な認知行動療法的なアプローチを行う.

A心理教

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?