診療支援
治療

シックハウス症候群/化学物質過敏症
sick house syndrome(SHS)/chemical sensitivity(CS)
黒岩義之
(帝京大学医学部附属溝口病院客員教授・脳卒中センター)

頻度 よくみる

◆病態と診断

Aシックハウス症候群/化学物質過敏症とは

・1970年代から建築物の省エネ化を背景に室内環境の化学物質曝露により体調不良を起こす者が続出した(シックハウス症候群;SHS).

・多様な化学物質に対する過敏反応が慢性的に起こり,低濃度の曝露でも体調不良を起こすことがある(化学物質過敏症;CS).化学物質過敏反応は脳脊髄液漏出症でも認められる.

B疫学

・本邦SHSの有病率は2002年に14%であったが,2003年の建築基準法改正を境に減少し,2006年には4%になった.現在は1~3%と推定される.

・本邦では医師によって診断され,治療中のCS患者の有病率は0.2~1%である.本邦の化学物質高感受性者〔スクリーニング用国際問診票(QEESI)の基準値超過者〕は4~9%と推定されるが,CSの発症は原因の多様化を反映して,近年増加傾向にある.CS成人例は女性に好発する.

・CS患者における食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,気管支喘息の頻度は一般人と比べて明らかに高率である.

C病態

・CSがSHSを契機に発症する場合もある.

・小児CSの場合,母親もCSであることが少なくなく,遺伝的発症要因を否定できない.

・アレルギー疾患の保有者においてCSの発症リスクが高いとの報告もある.

D原因

・SHSは転居,建物の新築・増改築・改修などを契機に発症し.その原因となるのはホルムアルデヒド,トルエン,エチルベンゼン,キシレン,p-ジクロロベンゼン,有機リン系農薬などである.

・CSの環境的発症要因は過去における短期的な大量化学物質曝露または長期的な化学物質曝露である.主たる原因は揮発性有機化学物質,農薬,燃焼ガスなどの急性または慢性吸入曝露である.衣服の洗剤や香料入り柔軟剤,自宅の新築・改装・転居,職場や学校の新築・改装,農薬散布,耐震工事,近隣の新築,プラスチック,シンナー,スプレー缶塗料,

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?