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治療のポイント
・急性期合併症は緊急処置を要し,早期発見と適切な対応で経過に多大な影響を与える.
・骨折部の固定は,周囲軟部組織の悪化や全身性合併症の防止につながる.
◆病態と診断
A脂肪塞栓症候群
・骨折部から漏出した骨髄脂肪が,血管内に迷入し肺塞栓をきたした状態.
・呼吸困難,点状出血,中枢神経障害が特徴的であり,Gurdや鶴田の診断基準で診断する.
B深部静脈血栓症,肺血栓症
・骨折により凝固亢進し,下肢静脈血栓,浮遊した血栓が肺動脈を塞栓した状態.
・血液学的検査(Dダイマー),超音波検査や造影CTで診断を行う.
Cコンパートメント症候群
・骨折などで筋区画内圧が上昇し,筋肉や神経に循環障害を生じた状態.
・主に臨床症状で診断されるが,補助診断として筋区画内圧測定器が使用される.
D神経血管損傷
・骨片や受傷外力で神経や血管が圧迫・断裂することによって生じる.
1.神経損傷
・徒手筋力検査,Semmes-Weinstein test,末梢神経伝達速度,筋電図,MRIで診断する.
2.血管損傷
・ハードサインで動脈損傷を疑い,造影CTや血管造影検査などを用いて確認する.
◆治療方針
A脂肪塞栓症候群
特異的な治療法はなく,循環呼吸状態の維持のため集中治療室で対症療法を行う.受傷から24時間以内に骨折部を固定することは発症リスクを低下させる.
B深部静脈血栓症,肺血栓症
予防が重要であり,理学療法や抗凝固療法を中心に行う.患者状況に応じて下大静脈内フィルターや外科的塞栓除去術を行う場合もある.
Cコンパートメント症候群
診断から早期に筋膜切開術を施行する.開放創は感染のリスクが高いため抗菌薬投与を行い,腫脹が改善した際に,閉創または植皮術を施行する.
D神経血管損傷
1.神経損傷
不完全麻痺は保存治療の適応となる.開放性損傷で完全麻痺は早期手術治療が望ましいが,神経症状が曖昧な場合において3~6週,閉鎖