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GL脊柱靭帯骨化症診療ガイドライン2019
治療のポイント
・無症候性の脊柱靭帯骨化症は基本的に経過観察とする.ただし骨化サイズの大きい症例に関しては神経症状悪化の危険性があり,慎重な神経症状の観察やX線検査,CT検査のフォローアップが必要である.
・運動麻痺や歩行障害などを伴わず,両上下肢の疼痛やしびれなどの神経障害性疼痛のみの場合は薬物療法などの保存的治療を原則とする.
・重度の運動麻痺や歩行障害,巧緻性障害がみられる場合や,中等度の障害でも症状が進行性の場合は手術的治療を検討する.
◆病態と診断
A病態
・脊柱靭帯骨化症は脊柱を構成する靭帯(後縦靭帯や黄色靭帯)の骨化を本態とする疾患であるが,その成因に関しては不明である.糖脂質代謝異常(糖尿病など)や肥満,骨代謝異常に関連する併存症(くる病や骨軟化症)が後縦靭帯骨化症(OPLL:ossification of the posterior longitudinal ligament)と関連することが示唆されている.また力学的要素がOPLL発生,骨化増大に寄与するという報告もある.発生率に人種差や地域差があることから,遺伝的,環境的要因など多因子が発症に関与すると考えられている.OPLL発症に関与する疾患感受性遺伝子のなかで,RSPO2は力学的負荷や炎症刺激による靭帯の異所性の軟骨内骨化を抑制しており,その機能喪失がOPLL発症につながる可能性が示唆されている.
・OPLLはアジア系人種に多いことが知られており,わが国の発生率は1.9~4.3%程度といわれ,女性より男性で2倍多くみられる.OPLL発症は50歳代以降が多く,70歳代で最も多いといわれている.健診CT検査で,健常日本人の中でOPLLを有する割合は6.3%という報告もある.頸椎に最も多くみられるが,胸椎,腰椎にも散見される.
・黄色靭帯骨化症(OLF:ossifi