診療支援
治療

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)
Wilms tumor(nephroblastoma)
伊藤敬一
(防衛医科大学校教授・泌尿器科学)

頻度 あまりみない(希少癌である.小児悪性腎腫瘍のなかでは最も多い)

GL小児がん診療ガイドライン 2016年版

治療のポイント

・日本ウィルムス腫瘍研究グループ(JWiTS)のプロトコールで治療が行われている.米国小児がんグループ(COG)の治療方針に準じている.

・腎腫瘍の完全摘除を行い病期診断と病理組織診断を確定し,その診断に基づき化学療法や放射線治療などを行う.

・両側腎腫瘍(Stage Ⅴ)では術前化学療法で腫瘍縮小を目指す.可能な限り腎機能温存を考慮した腫瘍摘出を行う.術後化学療法は,より進行した側の局所病期と病理所見で決定する.

◆病態と診断

A病態

・神経芽腫,肝芽腫とともに小児3大固形悪性腫瘍とされている.

小児腎悪性腫瘍のなかで最も頻度が高く,本邦では年間40~60例の登録症例がある.

・1歳未満で20%,多くは2歳前に発症し,5歳までに90%が発症する.

・両側発生は約5%とされている.まれに腎外性(後腹膜や鼠径部など)の発生もある.

・胎生5週頃に出現する後腎芽組織が発生母地と推測されている.

・組織学的には,正常の腎になっていく組織に類似した未分化小円形細胞(blastemal cell),上皮様細胞,間質細胞の3つが種々の割合で混在し,腎発生に類似した組織像をなす.

・腎芽腫以外の小児腎悪性腫瘍には明細胞肉腫,悪性ラブドイド腫瘍などがある.これらは腎芽腫の不全型として以前は分類されていたが,現在の日本病理学会の分類では腎芽腫には含めないこととなっている.

・癌抑制遺伝子のWT1WT2などの変異が関与している.

・泌尿生殖器系(尿管異常,停留精巣,尿道下裂,水腎症など),筋・骨格系(片側肥大,四肢変形など),循環器系,呼吸器系などの合併奇形が多い.

・Beckwith-Wiedemann症候群(腎芽腫,臍ヘルニア,巨舌,巨体),WAGR症候群(腎芽腫,無虹彩症,尿路奇形,精神発

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