◆病態と診断
A病態
・挙児を希望する健康な男女が避妊せず性交をしているにもかかわらず,1年間妊娠しないものを不妊症と定義している.不妊症の検査や治療を受けたことがある夫婦は約2割にのぼる.
・排卵障害や月経不順,子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科疾患,腹腔内感染や腹部手術の既往歴を有する場合や,女性ではおおむね35歳以上,男性ではおおむね40歳以上で妊娠しにくくなるとされている.
・安全な妊娠・分娩管理のために,肥満・高血圧などの併存疾患をコントロールしたうえでの不妊治療が望ましい.
B診断
1.排卵因子
・基礎体温測定により,排卵や黄体機能を簡易的に評価できる.
・経腟超音波検査により,卵胞発育や器質的疾患の有無のほか,胞状卵胞数(AFC:antral follicle count)によって卵巣予備能を評価する.
・月経周期3~7日目に卵胞刺激ホルモン(FSH),黄体化ホルモン(LH),エストラジオール(E2)を測定する.
・排卵障害症例ではプロラクチン(PRL)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定が望ましい.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)を疑う症例ではテストステロン(T)を測定する.
・抗ミュラー管ホルモン(AMH,保険適用外)によって卵巣予備能を評価できる.
2.卵管因子
・クラミジア抗体検査(IgG,IgA)によって腹腔内感染の既往を評価できる.子宮頸管クラミジア核酸増幅検査は検査時点でのクラミジア感染の有無の診断に有用だが,腹腔内感染を確認できないこともある.
・卵管疎通性検査には子宮卵管造影(HSG:hysterosalpingography)が一般的だが,造影剤アレルギーを有する場合は超音波下卵管通水法や卵管通気法を実施する.検査に際してはクラミジア感染の陰性を確認する.腹腔内感染や腹部手術の既往歴を有する場合は早期に実施することが望ま