診療支援
治療

小児のかぜ症候群
common cold in children
伊藤健太
(あいち小児保健医療総合センター・総合診療科医長)

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GL抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 乳幼児編(2019)

治療のポイント

・3か月未満の乳児では重症感染症とかぜ症候群の区別が難しいため,小児科医の診察が必要である.

・学童期以降の小児では,症状や身体所見から成人と同様の疾患定義に基づいて診断することが可能である.

・重症度をpediatric assessment triangle(PAT)を用いて評価する.

・小児のかぜ症候群の自然経過を知り,そこから外れていないかを問診する.

・抗菌薬による治療が必要になる中耳炎や肺炎などの合併症の評価が診療において重要である.

・患者・家族の心配を受け止め,丁寧に説明・指導する.

◆病態と診断

A病態

・かぜ症候群はウイルスによる上気道の炎症で,鼻閉鼻汁咳嗽などを主症状とし,特別な治療を要しない自然軽快する疾患である.

・鑑別を要する抗菌薬の適応となる細菌感染症としては中耳炎,肺炎,副鼻腔炎が挙げられる.

B診断

・問診,診察により,自然経過から外れておらず診察時点で合併症がないことを確認すれば,暫定的にかぜ症候群と診断する.

・かぜ症候群の半数は10日以内に改善し,9割は15日以内に改善する.

・合併症を起こしていないか診察で確認する.特に中耳炎は合併率が高いため,耳鏡を用いた鼓膜の診察は必須である.

・細菌性肺炎の合併頻度は高くない.しかしかぜ症候群の自然経過として長引く,また呼吸窮迫症状が強い場合は考慮する.

・副鼻腔炎の合併は,①症状が改善なく10日以上持続しているか,②重症か(発熱>39℃,膿性鼻汁,重症感が3日以上持続),③改善傾向になってから再度増悪しているかなどを丁寧な問診で評価する.

◆治療方針

 特異的治療は存在せず,基本的に対症療法が中心である.経口摂取不良,眠れないなどの症状がある場合には解熱薬の投与を考慮する.高いエビデンスレベルで効果が証明された鎮咳薬や去痰薬などはない

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