診療支援
治療

小児のIgA腎症
IgA nephropathy in children
石倉健司
(北里大学主任教授・小児科)

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GL小児IgA腎症診療ガイドライン2020

ニュートピックス

・病態の進展に補体活性化の関与が示唆され,補体経路活性化阻害薬を治療薬として用いる検討も始まっている.

治療のポイント

・腎機能,尿所見(蛋白尿)と腎病理所見で,重症度を判定する.

・ACE阻害薬を基本とし,重症例にはステロイドおよび免疫抑制薬を併用する.

・特に本邦では,成人を中心に扁桃摘出およびステロイドパルス療法が積極的に用いられているが,小児ではさらなる検討が必要である.

◆病態と診断

A病態

・わが国の小児において,最も発症頻度の高い慢性糸球体腎炎である.

・無症候性血尿・蛋白尿にて発症することが多いが,約10%の症例では急性腎炎症候群やネフローゼ症候群をきたす.肉眼的血尿を繰り返すことも多い.

・発見契機は,本邦では70~80%が学校検尿であることが特徴である.

IgAを主体とする免疫グロブリンの糸球体メサンギウム領域への沈着に加え,メサンギウム細胞増多や基質増生を認める.

・IgAのヒンジ部に糖鎖不全を有するような遺伝的背景に加え,糖鎖不全IgA1産生亢進により,高分子IgA1免疫複合体が形成される.それが糸球体に沈着し,IgA腎症が惹起されると考えられている.

B診断

・血尿や蛋白尿の臨床症状に加え,確定診断には腎生検が必須である.以下のような腎病理所見を呈する.

 1)光学顕微鏡所見:メサンギウム細胞増多と基質の増生が特徴である.

 2)蛍光抗体法所見:IgAがメサンギウム領域にびまん性に最も強く沈着する.IgG,IgM,C3も同時に沈着していることが多いが,通常はIgAより沈着の程度は軽度であり,超えることはない.診断には,本所見が特に重要である.

 3)電子顕微鏡所見:メサンギウム領域の高電子密度沈着物が認められる.

・確定診断には,上記病理所見に加え,ループス腎炎,紫斑病性腎炎などの全身性疾患を除外して診断

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