診療支援
治療

眼窩疾患
orbital diseases
高比良雅之
(金沢大学病院臨床教授・眼科学)

治療のポイント

・診断にはMRIあるいはCTの画像検査が必須である.

・感染,非感染性の炎症,腫瘍の鑑別を行う.

・疾患によっては病変の生検あるいは全摘出を行う.

Ⅰ.眼窩蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)

◆病態と診断

・細菌感染による急性炎症で,眼瞼腫脹,発赤,疼痛がみられる.

・副鼻腔感染,外傷,齲歯・抜歯などが原因となることが多く,眼窩骨膜下に膿瘍を形成することがある.

◆治療方針

 取り急ぎ抗菌薬の全身投与を行う.画像検査で膿瘍を認めるときは,手術による排膿を行う.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.あるいは併用する.

1)メロペネム(メロペン)注 1回1g 1日3回 5日間 点滴静注

2)クリンダマイシンリン酸エステル注 1回600mg 1日3回 5日間 点滴静注

■帰してはいけない患者

・画像で眼窩膿瘍がみられる症例では,手術,抗菌薬の点滴などの入院治療が必要である.

Ⅱ.特発性眼窩炎症

◆病態と診断

・原因疾患が特定できない非感染性の眼窩の炎症である.

・症状が感染性眼窩蜂巣炎に似ることがあるが,抗菌薬の投与に反応しない.

◆治療方針

 ステロイドの全身投与が治療の基本である.眼窩蜂巣炎との区別がつきにくいときには,まず抗菌薬の投与を優先する.

Px処方例

 プレドニゾロン(プレドニン)錠 1回30mg 1日1回 7日間.以降漸減

注意 ステロイドの全身投与に際しては,真菌症の疑いがないか留意する.

Ⅲ.甲状腺眼症

◆病態と診断

・眼球突出,上眼瞼後退,眼球運動障害,眼位異常などがみられ,重症例では視神経症を伴う.

・画像ではしばしば複数の外眼筋腫大がみられる.

◆治療方針

 炎症の活動期ではステロイドパルス治療が基本となる.眼窩減圧手術の適応となる症例もある.

Px処方例

 メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール)注 1回1g 1日1回 点滴静注 3日間連続後,休薬4日間を1クールとして,2

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?