診療支援
治療

眼瞼下垂
blepharoptosis
三木淳司
(川崎医科大学教授・眼科学)

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治療のポイント

・眼瞼手術が主な治療になるが,外科治療前に内科的治療が第1選択の重症筋無力症の可能性も考慮する.

◆病態と診断

A病態

・上眼瞼挙筋または瞼板筋の作用不全に伴う上眼瞼の挙上障害により,上眼瞼縁の位置が低くなっている状態である.

・代償性に前頭筋を使って眼瞼を挙上するため,眉毛の挙上がみられることが多い.

・偽眼瞼下垂と区別する必要がある.眼瞼皮膚弛緩症では,たるんだ皮膚に眼瞼縁が隠されているために眼瞼下垂のようにみえる.他眼の上眼瞼後退や上下斜視に伴う偽眼瞼下垂もある.

・先天性と後天性に分けられる.

1.先天性

・ほかに異常を伴わない非進行性の小児の眼瞼下垂では,上眼瞼挙筋の形成異常に伴う先天眼瞼下垂を疑う.

・先天眼瞼下垂では下方視での上眼瞼下降が不十分である.

・上直筋麻痺を伴うこともある.

・外側翼突筋と上眼瞼挙筋の異常連合運動によるマーカス・ガン現象を伴うこともあり,口を開けたり,顎を横にずらすと眼瞼下垂眼の上眼瞼挙上がみられる.

・弱視を伴うことがあり,視力の確認が必要である.

2.後天性

・程度が強いときは動眼神経麻痺や重症筋無力症などを考えるが,軽いときは交感神経麻痺による瞼板筋の作用不全が生じるホルネル症候群を考える.

・瞳孔異常のある片眼性なら動眼神経麻痺やホルネル症候群を考える.

・緩徐発症で両側性なら筋原性を考える.

・動眼神経麻痺は微小血管障害による虚血性のものが多いが,脳動脈瘤や脳腫瘍によるものもまれにある.

・重症筋無力症では症状の変動が特徴的であり,眼球運動障害も伴う.

・上眼瞼の瞼板から上眼瞼挙筋の腱膜が離開することによって生じる腱膜性(加齢性)の眼瞼下垂は頻度が高く,ほかに異常がないときには腱膜性を疑う.腱膜性はコンタクトレンズ(特にハード)装用者では比較的若年で生じる.

B診断

・視診により診断が可能なことも多いが,顔写真を撮影しておくと経過観察によ

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