診療支援
治療

めまい,平衡障害
vertigo(dizziness),dysequilibrium
室伏利久
(帝京大学医学部附属溝口病院客員教授・耳鼻咽喉科)

頻度 よくみる

◆病態と診断

・われわれの身体平衡は,内耳前庭迷路由来の平衡覚,視覚および体性感覚入力を中枢神経系で統合処理し,外眼筋,四肢体幹および自律神経系に出力することで維持されている.また,中枢神経系に入力された情報により空間識が形成される.空間識は情動系の影響を受ける.

・このような複雑な身体平衡維持機構に破綻が生じた際の症状がめまい,平衡障害である.したがって,その病巣・病態・病因は多岐にわたる.そのため,診断にあたっては,身体平衡維持システム全体の評価が必要となるが,検査上特に重要であるのは,眼振を含む眼球運動の評価と,姿勢や歩行の障害として現れる身体平衡障害の評価である.さらに問診で得られた情報を加えて病巣・病態・病因の診断がなされる.

◆治療方針

 めまい,平衡障害の治療は,急性期治療と発作間欠期・慢性期治療に大別される.急性期治療は不快な自覚症状の改善が主たる目的であり,発作間欠期・慢性期治療は再発予防と不可逆的変化のために残存する症状の改善に主眼をおく.

A急性期治療

 めまい発作急性期には,悪心・嘔吐などの自律神経症状と不安感が強いので,これらの症状の緩和を念頭におき,対症的な薬物治療を診断と並行して行う.この段階での薬物治療としては,点滴静注あるいは筋注などの注射が行われることが多い.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)生理食塩液 1回100mL+ヒドロキシジン(アタラックス-P)注 1回25mg 点滴静注保外

2)生理食塩液 1回100mL+メトクロプラミド(プリンペラン)注 1回10mg 点滴静注

3)ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン)注 1回1mL 筋注

不適切処方 3)は,閉塞隅角緑内障の患者,前立腺肥大症などにより尿路下部に閉塞のある患者には禁忌である.

B発作間欠期・慢性期治療

 発作間欠期・慢性期の治療には,薬物治療,理学療法

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?