ニュートピックス
・2019年に行われた日本口腔・咽頭科学会の全国調査では,1年間に推計27万人が味覚異常で医療機関を受診していた.70歳代が最も多く,今後も加齢に伴い増加することが予想された.
治療のポイント
・現在,本邦で味覚障害に対して最も多く行われている亜鉛内服療法は,受容器障害に対してのみエビデンスをもつ.
・味覚障害を保険適用とした薬剤はない.
・COVID-19における味覚異常の多くは風味障害であり,嗅覚障害の治療が必要となる.
・近年,中枢機能システム異常(心因性含む)が多く,向精神薬を用いるケースが増えた.
◆病態と診断
A病態
・障害部位は受容器(味蕾)のほかに末梢神経,中枢神経,伝導障害がある.
・原因としては,亜鉛などの微量元素やビタミン欠乏,薬剤,感冒,口腔疾患,全身疾患,精神疾患,末梢神経疾患,心因(ストレス)性,医原性,中枢疾患などがある.
・亜鉛欠乏にて味細胞の新生交代遅延や酵素活性の低下が起こり,受容器障害が発症する.
・「何も食べていないのに口内が苦い」などの自発性異常味覚の一部は舌痛症と同様の病態であり,聴力における耳鳴りに相当する.
B診断
・契機,症状の詳細,内服薬,既存疾患,随伴症状,ストレスの有無などを問診する.
・真菌や舌炎,口内衛生,義歯の状態など口腔内に原因がないか確認する.
・本邦で保険収載されている電気味覚検査,ろ紙ディスク法を用い,味覚機能評価を行う.唾液量測定,心理検査,血液検査(一般,血清亜鉛・鉄・銅値,ビタミンB12,葉酸など),必要があれば嗅覚検査や消化管精査を行う.
◆治療方針
原因疾患の治療,原因薬剤の減量・変更・中止,心因(ストレス)の排除,欠乏物質の補充が最優先である.原則,受容器障害には亜鉛内服療法を行う.特発性においても潜在的な亜鉛欠乏の存在が示唆されている.特発性や加齢性では随証に合わせた漢方治療が奏効することがある.精神症状を