診療支援
治療

顔面神経麻痺
facial nerve paralysis
萩森伸一
(大阪医科薬科大学専門教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

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GL顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版

ニュートピックス

・2022年,日本顔面神経学会において顔面神経麻痺相談医ならびに顔面神経麻痺リハビリテーション指導士の認定制度が開始され,認定者の一覧が学会ホームページに公開されている.

治療のポイント

・ベル麻痺の大部分やラムゼイ・ハント症候群(以下,ハント症候群)などのウイルス性顔面神経麻痺が多くを占め,発症後数日から1週間にわたり症状が進行する.

・発症初期における神経変性の防止が重要であり,できるだけ早期に治療を開始する.

・ステロイドと抗ウイルス薬の内服や点滴が急性期治療の中心である.

・予後不良が示唆されれば,顔面神経減荷術の適否をすみやかに検討し,施行する.

・重症例ではリハビリテーションを行い,後遺症を予防する.

◆病態と診断

A病態

・顔面神経麻痺は中枢性と末梢性に大別される.中枢性麻痺の原因は,脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によるものと,先天性のものがある.

・末梢性顔面神経麻痺には水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella-zoster virus)や単純ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus)などのウイルス性,側頭骨骨折に伴う外傷性,小脳橋角部腫瘍や顔面神経鞘腫,耳下腺癌,白血病,転移性腫瘍などの腫瘍性,中耳炎による耳炎性,中耳手術や耳下腺手術などの際の医原性,糖尿病やサルコイドーシスなどの全身疾患によるもの,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症,ギラン・バレー症候群などの神経疾患によるものなどがある.

・明らかな原因がみられないもの,すなわち特発性の末梢性顔面神経麻痺をベル麻痺とよび,顔面神経麻痺のなかで最多である.近年の研究で,ベル麻痺の多くがHSVの再活性化によることが明らかになった.ウイルス再活性化による顔面神経麻痺はハント症候群も含めると全体の約7割を占める.

・ベル麻痺や

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