診療支援
治療

がん患者の口腔ケア
oral care for cancer patients
八木原一博
(埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター・歯科口腔外科科長)

ニュートピックス

・骨転移に対する骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(MRONJ:medication-related osteonecrosis of the jaw)について,米国口腔顎顔面外科学会(AAOMS)は2022年5月,8年ぶりにポジションペーパーを改訂した.そのなかで,抗骨吸収療法中の無症候の患者に対して,抜歯を含む歯槽外科処置前の骨吸収抑制薬休薬の有効性の有無については,エビデンスが不足していると報告した.

治療のポイント

・がん患者の口腔ケア(口腔衛生管理)は,基本的に口腔を含む頭頸部がんと全身他臓器,造血器腫瘍で異なる.

・がん治療前には,歯性感染病巣の管理が重要である.

・近年,がん薬物療法に用いられる薬剤は殺細胞性抗癌剤に限らず,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など多種にわたる.患者個々に状態が異なることから,腫瘍治療医との連携が重要である.

◆病態と診断

・口腔ケアの対象となる疾患として,口腔粘膜炎,齲蝕や歯周病を含めた歯性病巣感染MRONJなどが挙げられる.さらに口腔粘膜炎に随伴して口腔乾燥症,味覚障害,口腔カンジダ症やウイルス感染症を生じることがある.

・口腔粘膜炎の分類として,「有害事象共通用語規準(CTCAE)v5.0日本語訳JCOG版」がある.v5.0は機能,症状を主体にした分類であり,診察所見によるものはv3.0に記載されていることから,こちらも参照されたい.

・造血幹細胞移植後の粘膜障害として慢性移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)があり,扁平苔癬様の変化を呈する.

◆治療方針

 頭頸部がん,特に口腔がん患者の口腔ケアは原疾患と近接するため,腫瘍性出血や誤嚥に注意すべきである.また,放射線治療のうち強度変調放射線治療(IMRT:intensity-modulated radiation therapy)は,口腔粘膜

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