【概説】①保湿外用薬は乾燥皮膚(乾皮症,皮脂欠乏症)を改善させる目的で用いられる.乾燥した皮膚の表面は粗糙な外観を呈し,しばしば鱗屑や落屑がみられ亀裂を伴うこともある.触るとカサカサあるいはごわごわと硬い.自覚症状として痒みがあることが多い.②保湿外用薬はエモリエント(広義)ともいい,乾燥した角層に潤いを与え滑らかに柔軟に保つことが主たる作用である.白色ワセリンなどの油脂成分は,皮表を覆う閉塞剤として働き,塗布後時間が経つと体内からわずかに蒸発する水分が貯留し角層が潤い柔軟になる(狭義のエモリエント).尿素やヘパリン類似物質など角層内で水分を保持する成分(湿潤剤)を含む製剤は,直接的に水分を角層に与える(モイスチャライザーともいう).有効成分として記載されている成分以外にも基剤やグリセリンなど添加物として記載されている成分にも保湿効果がある.
【適応】皮脂欠乏症(アトピー性,老人性など).掌蹠角化症.進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型),魚鱗癬など.
【薬剤】ヒルドイドクリーム,ヒルドイドローション,ヒルドイドソフト軟膏,ウレパールローション,ウレパールクリーム,パスタロンクリーム,パスタロンソフト軟膏,ザーネ軟膏,ユベラ軟膏など.ヒルドイドの有効成分ヘパリン類似物質は保湿作用があるほか,線維芽細胞増殖抑制作用により肥厚性瘢痕・ケロイドに,血流量増加作用により凍瘡に有効性が認められる.ウレパールやパスタロンに含まれる尿素は角層の保湿作用のほか,鱗屑の剝離作用があり,掌蹠角化症や魚鱗癬など角層が滞積した疾患に有用であるが,亀裂やびらん部には刺激がある.ザーネ軟膏およびユベラ軟膏に含まれるビタミンAは,水分保持作用のあるムコ多糖類を増加させるほかケラチン形成抑制作用があるため角層が滞積し乾燥した病変に有効であるとされる(表3-12)図.油脂性のエモリエントとして白色ワセリン,プロペ
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