病態
額や鼻唇溝,被髪頭部,胸骨部,腋窩などの脂漏部位に鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑が出現し,慢性に経過する疾患.新生児期から乳児期早期にみられる乳児期脂漏性皮膚炎と,思春期以降に生じる成人期脂漏性皮膚炎に分けられる.
【頻度】皮膚科外来患者の3~4%を占める.
【病因・発症機序】皮脂の分泌が盛んな時期に脂漏部位に生じ,本症患者の病巣部から好脂性酵母であるマラセチア(Malassezia furfur)が検出される頻度が健常人に比べて高いこと,抗真菌外用薬が本症に奏効することなどから,マラセチアが本症の発症に関与していると考えられる.またビタミンB群の欠乏に伴うものや,糖尿病,高血圧症などに伴うものも報告されている.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】尋常性乾癬,接触皮膚炎,アトピー性皮膚炎,白癬菌やカンジダによる皮膚真菌症,酒皶様皮膚炎などが,主に鑑別すべき疾患である.乳児期にみられ難治な場合には,Langerhans細胞組織球症も念頭におく.
【問診で聞くべきこと】①乳児期:アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患の家族歴を問診する.②成人期:低湿度で悪化することが多いので,過度の空調の有無を問診する.ビタミンB群の欠乏については偏食の有無を尋ねる.
【臨床症状からの診断】①乳児期:生後1か月頃から被髪頭部,前額部,眉毛部,鼻周囲などに,黄白色の厚い痂皮(乳痂)を伴う紅斑局面や紅色の丘疹が集簇してみられる(図4-9)図.瘙痒は通常軽度で,瘙痒が強い場合はアトピー性皮膚炎を疑う.②成人期:被髪頭部や髪際部,前額部や眉間,鼻唇溝,耳周囲などの粃糠様ないし油性の鱗屑を伴う比較的境界明瞭で浸潤の少ない淡い紅斑局面が左右対称性にみられ(図4-10)図,軽度の瘙痒を伴うことが多い.同様の皮疹は,前胸部や上背部,腋窩,臍,鼠径部,陰股部などにもみられることがある.
【必要な検査】苛性カリ法で真菌感染を除外
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