診療支援
治療

多形紅斑
Erythema exsudativum multiforme
谷川 瑛子
(慶應義塾大学准教授)

病態

 多形紅斑はさまざまな感染症または薬剤により皮膚,時に粘膜に特徴的な病変を生じる,免疫が介在する炎症性反応である.臨床的には爪甲大までの滲出性紅斑のほかにも丘疹,小水疱,水疱など多彩な皮疹(多形性)を呈し,時に全身症状を有する.症状の重症度により,erythema multiforme minor(EM minor),erythema multiforme major(EM major)とStevens-Johnson症候群(SJS)に分類されている.各病型に共通する病理組織学所見は表皮真皮境界部の空胞変性,個細胞壊死,リンパ球浸潤である.

【頻度】本邦の2009年の調査において紅斑症は皮膚科受診患者の1%未満(0.65%),本症はその0.29%を占める.年齢60歳代後半~70歳代前半に多いが,成人全般にみられ,性差はない.

【病因・発症機序】多形紅斑の病因としてウイルス〔特に単純ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus),サイトメガロウイルス〕,細菌(Mycoplasma pneumoniae,溶連菌),真菌などによる感染症のほか,薬剤(抗菌薬,NSAIDsなど)も重要である.またワクチンや感作能のある物質に接触したあとにも生じる.そのほか,原因となりうる基礎疾患として炎症性腸疾患,全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病,悪性腫瘍など多岐にわたる一方,原因不明のことも多い.EM minorは春と秋,若年者に多い.発症機序の詳細は不明であるものの,病理組織学的検査所見に液状変性,表皮細胞の個細胞壊死,リンパ球浸潤が共通していることから,組織障害には浸潤しているリンパ球の関与が考えられている.HSVによる多形紅斑はHSV関連多形紅斑(HAEM:herpes-associated erythema multiforme)といわれ,病変部HS

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?