診療支援
治療

扁平苔癬
Lichen planus:LP
森実 真
(岡山大学学術研究院医歯薬学域教授)

病態

 扁平苔癬は皮膚・粘膜に発症する慢性炎症性角化症の1つである.その発症頻度は全人口の0.5~1.0%程度であり,男女に等しく発症する.多くの場合は30~60歳に発症し,小児にはまれである.主に皮膚および口腔粘膜に発症するが,その他の粘膜(外陰部,食道,結膜)および皮膚付属器(髪,爪)にも発症する.

 扁平苔癬の病因は不明であるが,表皮基底層角化細胞の液状変性部では細胞傷害性Tリンパ球が浸潤しているため,同細胞に対する自己免疫性皮膚疾患である可能性が示されている.標的となる抗原は同定されていない.扁平苔癬の誘因として,薬剤,C型肝炎ウイルスをはじめとしたウイルス感染症,細菌感染症,接触皮膚炎,自己免疫性疾患,B型肝炎ウイルスワクチン,歯科金属などが知られているが,実際には原因の特定が困難な例が多い.薬剤性の場合,金製剤,抗マラリア薬,非ステロイド系消炎鎮痛薬,降圧薬,アンジオテンシン酵素阻害薬またはβ遮断薬などが頻度の高い薬剤である.また,免疫チェックポイント阻害薬投与中に生じる免疫関連有害事象(irAE:immune-related adverse events)としての扁平苔癬の報告が近年増加している.造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(GVHD:graft-versus-host disease)の皮膚症状として,扁平苔癬様の皮疹が現れることがある.

 家族性扁平苔癬においては,遺伝因子としてHLA-DR1の関連が指摘されている.扁平苔癬患者では,円形脱毛症および潰瘍性大腸炎が対照集団よりも高頻度に発生することが報告されている.

 口腔,口唇の扁平苔癬は,数%の頻度で有棘細胞癌を発症する.慢性肛門性器,食道,または肥厚型皮膚の扁平苔癬でも有棘細胞癌の合併が報告されている.

【臨床症状】典型的な皮疹は扁平,多角形で,表面にわずかな鱗屑を付す紫紅色丘疹または局面である.症例に

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