診療支援
治療

強皮症(1)全身性強皮症
Systemic sclerosis
浅野 善英
(東京大学准教授)

病態

 全身性強皮症(SSc)は,皮膚および内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする膠原病で,その発症には自己免疫が関与している.免疫異常を基盤として血管内皮細胞が傷害され,続発する血管のリモデリング異常と慢性炎症を介して線維芽細胞が恒常的に活性化され,さまざまな臓器に細胞外基質が過剰沈着し,最終的に多臓器障害に至る.

【頻度】本邦における患者数は3万弱,男女比は1:7~12,好発年齢は30~60歳代である.

【病因・発症機序】病因は不明である.多因子疾患であり,特定の環境要因との関連を示す一群がある(職業性強皮症).

【臨床症状】Raynaud現象,手指腫脹,手指潰瘍,皮膚硬化,間質性肺疾患,肺高血圧症,胃食道逆流症,吸収不良症候群,心線維化,強皮症腎クリーゼなど,臨床症状は多岐にわたる.

【特に注意すべき臨床症状】間質性肺疾患と肺動脈性肺高血圧症が,疾患に関連した死因として最も多い.


診断

 臨床症状,爪郭部毛細血管異常,自己抗体検査から総合的に診断する.診断基準,分類基準,早期診断基準案があるが,それぞれの利点と欠点を理解したうえで目的に応じて適切に活用することが重要である.

 本邦におけるSScの診断基準(表12-4,図12-6,図12-7)は,医療費公費負担の対象となる定型例を抽出するために作成されており,早期例や非定型例の診断には無力である.早期例や非定型例が疑われる場合は,国際的に用いられている「2013 ACR/EULAR分類基準」(表12-5)を参考にするとよい.分類基準は「臨床試験において定型例を抽出すること」を目的に作成されており,本来診断基準として用いるべきではないが,本分類基準は「定型例のみでなく早期例やSSc sine scleroderma(内臓病変はあるが皮膚硬化を欠く)を含めた多様な患者群」においても高い感度と特異度を有しており,実臨床では診断基準

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