診療支援
治療

移植片対宿主病(GVHD)
Graft versus host disease:GVHD
簗場 広一
(医療法人社団どんぐり皮膚科副院長)

病態

 移植片対宿主病(GVHD)とは,造血幹細胞移植などにより移植された提供者の免疫担当細胞(主にT細胞)が宿主に拒絶されずに生着したあとに,宿主の組織抗原に対して免疫反応を起こした結果,諸臓器の障害をきたす疾患である.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】薬疹,各種ウイルス感染症,細菌感染症.

【臨床症状からの診断】主に攻撃される臓器は皮膚,消化管,肝臓であるが,皮膚症状が先行することが多い.急性GVHDと慢性GVHDに大きく分けられるが,急性GVHDはさらに移植後100日以内に生じる古典的急性GVHDと,100日以降に発症または持続,再燃する非典型的急性GVHDに分類される.慢性GVHDは移植後100日以降に慢性症状が生じる古典的慢性GVHDと,慢性症状と急性症状が混在する重複型とに分類される.

1.急性GVHD(図12-20a)

 多くは移植後2~5週後に発症し,手掌や足底の浮腫性紅斑から始まり,四肢,体幹に広がる.重症化すると紅皮症となり,中毒性表皮壊死症のように全身の水疱,びらんを生じる.

2.慢性GVHD

 皮膚や粘膜に扁平苔癬様病変を生じる.時に広範に強皮症に類似した皮膚硬化を生じ,関節拘縮をきたすことがある.

【必要な検査とその所見】皮膚生検が有用である.急性GVHDでは表皮基底層の液状変性,表皮内リンパ球浸潤がみられる.壊死したケラチノサイトを数個のリンパ球が取り囲む像(satellite cell necrosis)がみられることがある(図12-20b).またランゲルハンス細胞が減少することから,CD1a染色を行い確認できればさらに有用である.慢性GVHDでみられる扁平苔癬様皮疹では通常の扁平苔癬と,強皮症様皮膚硬化では強皮症と同様の組織所見所見を呈する.


治療

 軽症であればステロイド外用薬による局所療法を行う.重症例ではステロイド内服,ステロイドパルス療法,免疫抑

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