診療支援
治療

結節性多発動脈炎
Polyarteritis nodosa:PAN
吉崎 歩
(東京大学講師)

病態

 Chapel Hill Consensus Conference (CHCC) 2012分類において,中型血管炎に分類される血管炎である.厚生労働省の定める指定難病の1つである.病因は不明であるものの,B型肝炎などの感染症に伴う場合があり,免疫学的な異常が発症に関与すると考えられている.腎臓,腹部,四肢末梢,中枢神経などの中動脈に壊死性血管炎と動脈瘤を生じる.臓器障害を伴わず皮膚に限局する,かつては皮膚型結節性多発動脈炎とよばれていた病態が存在するが,CHCC2012分類では皮膚動脈炎の名称が付けられており,単一臓器のみを障害する血管炎に分類されている.皮膚動脈炎が結節性多発動脈炎の部分症状なのか,別の病態なのかは現在も議論が続けられており,結論が出ていない.

【頻度】結節性多発動脈炎には顕微鏡的多発血管炎などの小型血管炎が含まれていたが,障害血管の大きさで分類したCHCC1994分類において,これらは明確に分けられるようになった.このため,相対的に患者数は減少している.結節性多発動脈炎の頻度は10万人対0.2~0.7人と推定され,本邦においては1,400人ほどの患者が存在する.男女比は1:1~2で好発年齢は50~60歳である.皮膚動脈炎は50歳代の女性に多くみられるとされる.

【臨床症状】発熱,体重減少,筋肉痛,倦怠感といった不定な全身症状から始まり,やがて炎症が生じた血管が支配する領域の,循環障害に伴う症状が出現する.主な症状出現部位は,皮膚,神経,腎臓,腸管,筋肉があり,厚生労働省が定める診断基準においても主要症候として挙げられている.皮膚症状(図13-2)として網状皮斑とよばれる紅斑を認めるが,一部が閉じない環状となるのが特徴である.皮膚動脈炎は臓器病変を伴わず,網状皮斑,紫斑,皮膚潰瘍,皮下結節などの皮膚症状のみを呈するのが定義であるが,皮膚病変部における末梢

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