診療支援
治療

顕微鏡的多発血管炎
Microscopic polyangiitis:MPA
川上 民裕
(東北医科薬科大学主任教授)

病態

 小血管レベル(毛細管,細小動静脈)を主体とした壊死性血管炎で,血管壁への免疫複合体の沈着はないかあってもわずかである(pauci-immuneといわれる).時に中型の筋性動脈(中血管レベル)に血管炎が及ぶこともある.腎病変(壊死性糸球体腎炎)と肺病変(肺毛細血管炎)をきたすことが多く,肺腎症候群といわれる.約80%で抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性で,MPO-ANCAが主.

【頻度】男女比はほぼ1:1で,平均発症年齢は50~60歳.

【病因・発症機序】ANCAサイトカインシークエンス理論といわれる,免疫複合体が関与しない,ANCAを中心としたメカニズムが知られる.最近,neutrophil extracellular traps(NETs)の関与が指摘されている.

【特に注意すべき臨床症状】腎と肺が病変の主体である.腎は,半月体形成を伴う壊死性糸球体腎炎と尿細管間質障害を起こす.壊死性糸球体腎炎が高頻度であり,数週間から数か月で急速に腎不全に移行する.肺は,肺胞毛細血管炎による間質性肺炎や肺胞出血を起こす.咳,労作時息切れ,頻呼吸,血痰,喀血,低酸素血症が現れる.慢性に進行すると通常型間質性肺炎(UIP:usual interstitial pneumonia)となる.ほかに,発熱,体重減少,易疲労感などの全身症状は70%,多発性単神経炎(60%),関節痛(50%),筋痛(50%),高血圧(30%),心筋病変による心不全(18%)などがある.加えて,肥厚性硬膜炎の合併が知られる.消化管病変は20%と他のANCA関連血管炎に比べて少ない.皮膚症状は約60%でみられ,網状皮斑(リベド),紫斑,結節(皮内,皮下),皮膚潰瘍など多彩である(図13-4)

【必要な検査とその所見】①病理組織学的検査:小血管(毛細管,細小動静脈),皮膚では真皮内の血管を主体とした壊死性血管炎で

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