病態
下肢静脈瘤は,下肢の表在静脈が蛇行拡張したものをいう(図13-10)図.るい瘦のあるもので下肢の静脈が浮き出て見えることがあるが,蛇行拡張していなければ静脈瘤とはよばない.重症になると浮腫やうっ滞性皮膚炎,脂肪織炎,潰瘍の原因となるため,皮膚科的にも重要である.
深部静脈血栓症は筋層内の深部静脈に血栓ができ,それにより種々の症状が出るが,肺塞栓の原因になったり急速に骨盤内まで血栓が進展,充満することがある.
【頻度】下肢静脈瘤はまれに若年に生じるが,通常30歳以上で,加齢に伴って60歳以上に多くなる.女性に多く,家族歴があることも多い.調理師などの立ち仕事や妊娠,肥満も要因になる.
【病因・発症機序】①下肢静脈瘤は1次性と2次性に分類される.1次性静脈瘤は弁不全により静脈血が下腿に向かって逆流しうっ滞,下肢静脈高血圧を生じて起こる.2次性静脈瘤は深部静脈血栓後遺症として生じる.閉塞した深部静脈の代わりに側副路として発達して生じるため,逆流はしておらず上行している.このため,2次性静脈瘤には外科的治療は禁忌である.②深部静脈血栓症は,下肢の筋層内の深部静脈に血栓が生じるが,下腿筋ポンプが長時間働かない状態,すなわち長時間の坐位(エコノミークラス症候群といわれる由縁である)や長期臥床で生じやすい.整形外科や産婦人科など外科手術後や,悪性腫瘍,血栓傾向となる疾患もリスクファクターである.ステロイドなどホルモン製剤やラロキシフェンなど薬剤も要因となることがある.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】下肢静脈瘤は肉眼で確認できることが多いが,肥満や浮腫があるとわかりにくいことがある.一方,うっ滞性脂肪織炎や潰瘍は下肢静脈瘤を伴わず,下腿筋ポンプ機能低下によっても生じる.急性期の深部静脈血栓症は蜂窩織炎と鑑別が必要となるときがある.
【問診で聞くべきこと】①下肢静脈瘤が重症になると,臨床的に
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